検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:20,131 hit

Apr.20 16:30 ページ6

.
.
.


ガラガラと古い音を立てる扉を開けた。
どこか懐かしい匂いと、新しい藺草の匂いが混ざる。

A弓具店。読んで字の如く、うちの家系が営んでいる。店主は教士の叔母様。お店だけでなく、弓具のメンテナンスなどもしてくれるので、私としては頭が下がる一方だ。

窓から差し込む夕陽に、埃がキラキラと瞬いたところで奥から声がかかった。


「いらっしゃ……あ。おかえりなさい、お嬢」

「……」

「ん?どうしたんスか?」

「……いえ、本当にそう呼ぶんだなと思いまして」

「そりゃあ。Aさんはおかみさんの姪御さんですから」


当然じゃないッスか! とペカペカの笑顔で話す彼は、今春からバイトとして働いている伏見ガクさん。
近くの大学に通いながら、週3日くらいで叔母様の代わりに店番をしてくれているお兄さんだ。


「あ。おかみさんは外出してるんスけど、お嬢の弓は射場に置いてあるって言ってましたよ」

「ありがとうございます。それじゃあ、店番お願いします」

「了解ッス!」


ペカッと笑う彼の横を抜けて、母屋の扉を開ける。ローファーを脱いで振り返ると、真面目に在庫を数える背中が見えた。

あ、そうだ。


「ガクさん」

「ん? どうしました?」

「あの。……ただいま」


大きな瞳を丸くする姿が、彼の髪型も相まってなんだか小狐のようで。それが存外にかわいらしい反応で、自然と口角が上がった。


「……はい。おかえりなさい」


ふわりと華やぐ笑みと、差し込む夕陽が影を落とす。
なんだか神秘的にものと見たような気分がした。

.
.
.


伏見ガク
大学3年生。
A弓具店のバイト。
決してお狐様ではない。

.
.
.

Apr.20 17:00→←Apr.20 10:10



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (94 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
453人がお気に入り
設定タグ:njsj , 2j3j , knmc
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

森。(プロフ) - 用語解説あるのすごく助かります!お話の雰囲気とテンポ感が好きです!次の話も楽しみです! (2023年3月12日 8時) (レス) @page9 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:花束 | 作成日時:2023年1月19日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。