Apr.20 08:30 ページ3
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「おはよう、A」
窓際。後ろから2列目。
春の陽気が惜しみなく降り注ぐ、学校生活における特等席。
ちょうど小説のページをめくったタイミングで声がかかった。
「おはよう、リリ。今日はギリギリじゃないのね?」
「ちょっと、ちょっと! 昨日がたまたま遅かっただけでしょ」
柔らかい桜色が揺れる。
後ろの席で1限目の教科書を並べる彼女は、夕陽リリ。1年の時に席が隣になったことがきっかけで仲良くなった友人だ。
「Aだって早く席に着いてるのなんて、金曜日だけじゃん」
「私は朝練をしているから遅めなの。それに、ちゃんと10分前には席に着いてるから!」
人のことを遅刻ギリギリに来るやつみたいに言わないでほしい。
「あ、そうだ。ねえ、今日は部活ないでしょ? 駅前に新しく和喫茶ができたんだよね。一緒に行こう?」
見て見て〜と差し出されたスマホには、数日前にオープンしたらしいカフェの写真。和をメインにしているらしく、餡蜜やらお団子やら抹茶やら。
カラフルすぎない色使いで、こじんまりとしたお店の情報が並んでいた。
「ああ……日曜日じゃダメ?」
「わたしはいつでも大丈夫だけど、今日はもう予定あった?」
「うん。明日、練習試合があるから弓引いときたくて」
「出た、Aの弓道馬鹿。でも、今日は弓持ってきてないよね?」
「馬鹿って……。メンテナンスも兼ねて、朝に叔母様のところに預けてきたの」
窓辺に立てかけた矢筒に触れる。おかげで今朝は電車がギリギリだった。
ああ、そういえば。
「ねえ、リリ。多分、近くの……」
「ほら、席着け! 授業始めるぞ!」
チャイムと共に、先生の声がかかった。おしゃべりもあっという間に、今日も授業が始まる。
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森。(プロフ) - 用語解説あるのすごく助かります!お話の雰囲気とテンポ感が好きです!次の話も楽しみです! (2023年3月12日 8時) (レス) @page9 id: 21990a494b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花束 | 作成日時:2023年1月19日 21時