連星αに捧ぐⅢ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ17)

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翼征ページ17

爆豪勝己にとって、魚住玲湖はただのクラスメイトである。天下の雄英高校ヒーロー科に合格したのだからそれなりの力量はあるのだろうと思うが、それでもNO.1のみを追い求める彼にとって彼女は踏み台、モブに過ぎない。例え彼女が何時、何処で、誰と、何をしていようとも爆豪にとって気に留めるまでの事ではなく、空気の様な存在であるべきだったのだ。そう、過去形である。
それは、暫く前に遡る。

魚住玲湖の体育祭不参加がクラスに伝えられた時点で、爆豪の中の不透明感は確実になり始めていた。魚住玲湖は、唯の生徒の一人ではないと。何か特別な事情を抱え込んでいるのだと。初めから違和感は抱いていた。本来、20人である筈のヒーロー科が一人多い事。相澤との会話から窺える明らかな確執込みの関係性。腫れ物に触れるような扱いをするその他教師陣。オールマイト辺りなんか、避けているのはあからさまだった。USJ襲撃事件の後は尚更。そして突然のヒーロー科からのボランティアスタッフ。
少しでも頭の回る奴であれば違和感位は感じるだろう。やるならもっと上手くやればいいものを、と思った事は一度二度ではない。口にも態度にも出さないが、爆豪はずっと不義感を隠し持っていた。そうしていたのは理由がある。どうでもいいからだ。爆豪の目的は天辺ただ一つのみ。クラスメイトの1人や2人の不審さ、学校側の歪な対応等、自分にとつては障害でも何でもない。邪魔にならなければそれで良かった。態々、爆豪が余計な思案をする必要はなかったのだ。ある一点を除いて。

「てめぇがいたら、トーナメントでボコしてやろうかと思った」
「わぁ熱烈」

ツンとした佇まいの魚住は、随分と器用に笑う。いかにも自然な感じで、上鳴の奴はそのギャップが良いのだと熱弁していた事を思い出す。いやいや、と爆豪は思った。あんな、作り物じみた顔のどこが魅力的に写るのだろうか。完璧に作り過ぎていて逆に違和感しか感じ得ない。繕った笑顔の意味は知らないが、時折剥がれた仮面の下は知っていた。巫山戯るなと思った。

「玲湖ちゃんはきっと、オールラウンダーなヒーローになるわ」
「だといいね」

諦めきった顔してよく言う。どうせ、ヒーローにはなれないのだからと、淡青は語っているのに。

「辞めちまえよ、お前。ヒーロー目指してないんなら。見てて痛々しいんだわ」

爆豪勝己にとって魚住玲湖はモブである。自身の言葉で、奴がとうなろうかと知った事ではなかった。