連星αに捧ぐⅢ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ11)

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玲湖にしろ、幼少期は怪我と結晶化はイコールで結ばれており、常に流血には気を使っていた。一度結晶化してしまったものを元に戻す事は、3歳の時点では不可能だったのだ。幼稚園児の時、転んで擦りむいた膝から垂れた血が地面を結晶と化してしまった事がある。幸い、垂れた血の量は少なく結晶と成り果てたのも一部分であり大事には至らなかったが、似たような事例は何度か起こしており制御の効かない幼少期は苦労した。流血が他人に触れてしまい、誰かの肉体を結晶と化してしまった事が無いのはせめてもの救いだ。それに比べて、彼の個性は対人が必要になる。彼の幼少期など、少しも知らないが制御に人一倍所ではない努力と忍耐が必要なのは聞かずとも分かった。基本的に自身の体にしか影響のない結晶化という個性をある程度使いこなすようにするにも相当な時間と密度とを要した。街を歩く殆どの人が個性を持つ時代となった今、個性を制御するのはマナーの一つである。小さな子供であっても、もしその個性の周囲に及ぶ危険性が強ければ白い目で見られるの事さえある。あるいは、子供の個性の暴発の皺寄せは、全てその両親に向かうことがあると、玲湖はよく知っていた。親の教育が悪いから、子供のことをちゃんと見ていないから、こんな危険な個性を放置しておくなんてどんな親なのだろう、敵予備軍ではないのか。事情も背景も知らない者達は一瞬で身を翻して制裁を与える執行人に成り果ててしまう。平等を謳い平穏を掲げる世間はシビアだ。

「……ヒーロー、に」

使い主次第で、個性はヒーローにも敵にも成りうる。個性云々ではなくて結局は個人の問題なのだ。敵向きの個性だと、心操は言った。確かに、悪用の仕方は山程ある。悪戯程度のものから、最悪大規模テロになりそうなものまで。が、彼が今、此処にいるという事は決して悪用をした事がないという証明になる。正真正銘、彼自身で掴み取った雄英高校入学と体育祭で唯一普通科での決勝リーグ進出。玲湖とは、また大きく違う。

「なれるよ。なれる」

だから、誇って欲しい。これらは全て、彼の力なのだから。

「……クラスメイトに、普通科の光だって言われたんだ」

口元をへの口にして、それでも少しだけ笑った。

「絶対、追い付くから」
「うん」

歪むことの無い、痛い程に一直線な視線に、玲湖は少しだけ泣きたくなった。

「待ってるから」

俯いて、有り得もしない将来を口にする。そんな事しか出来ない弱い自分が嫌になりそうだった。