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つーちゃん、と冬の湖面のように凪いだ声で呼ばれるのが好きだった。
折角綺麗な顔立ちをしているのに、何かに集中したり考え事をしていたり意識が逸れると何処と無く不機嫌そうにも見える顔が、こちらを見つけるとみるみる綻んでいくのを見るのが楽しみで、態と見つけさせようとこちらから声を掛けなかったこともあった。笑顔は女の子の最大のメイクなんて聞いたことがあるけれど、玲湖ちゃん程笑っている姿が似合う子を私は知らない。パッと見は、何処ぞの敏腕社長秘書、またはヤのつく組織の姐さん(前者は上鳴ちゃん、後者はお茶子ちゃんの発言だ)で冷たい雰囲気の拭えない玲湖ちゃんだけれど、蓋を開けてしまえばよく笑う普通の子だった。A組のムードメーカー(トラブルメーカーとも言う)的存在の三奈ちゃんや透ちゃんがはしゃいでいるのを見て目を細めていたり、ふにゃふにゃ緩々で耳郎ちゃんにもたれ掛かったり、上鳴ちゃんの冗談に乗ったり、声をあげて笑うことはないけれど、玲湖ちゃんといえば何時でも笑顔を浮かべている印象がある。中でも、取り分け好きなのが鼻に皺を寄せる癖のあるくしゃりとした笑い方。落ち着いた大人っぽい玲湖ちゃんがこの時はいつもより幼げに映るのだ。あどけなさの残るそれに脳殺されたのは多数(瀬呂ちゃんによって魚住スマイルと命名された)。
そんな玲湖ちゃんだから、誰とでも仲が良い。席の近いお茶子ちゃんに始まり、緑谷ちゃん飯田ちゃんといるのをよく見る。それだけでなくてクラスの女の子たち(それと砂藤ちゃん)によくお菓子を恵んで貰っていたりもした。加えて男の子達とも仲が良くて、上鳴ちゃんを初めとした切島ちゃん瀬呂ちゃんと冗談を言い合っていたり(執拗に爆豪ちゃんに話を振る辺り流石強心臓だと思う)、青山ちゃんの話を時折口を挟みながら聞いていたり。障子ちゃんと特に仲が良いのか、二人でいるのを見かけることもある(ファーストタッチの姫抱っこ事件から急接近したのだとしたら非常に心躍る案件だ)。
小柄な体躯だから視線が近くて、玲湖ちゃん独特の薄い青い瞳を間近で見ることが出来るのが自慢だ。切れ長だけど瞳は大きくて、長い睫毛に縁取られた宝石をこの距離で見ることが出来るのは私だけ。僅かな変化であってもよく分かる。笑顔のバリエーション、特に目の動きは豊かで見ていて面白い。笑って細まった瞼の隙間から青が零れているのを知っているのはきっと何人もいない。
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
