門出 ページ46
彼奴はどうなっているかと辺りを見渡して、次の瞬間に此処には居ないという事を思い出すのを何度かやった。保健室にいると聞いたが、そこから此方の様子は見えているのだろうか。今回の競技種目、つくづく彼奴、魚住がいない事が幸いだったと思う。反面いないと少し物足りないとも思った。魚住がどのように攻略するのが見たかったから。得意の結晶化で周りの妨害は容易だ。氷よりも固く解けないから更に厄介なトラップになる。ただ、個性の発動に血液が必要不可欠だから使い過ぎはしないと思う。あくまで要所で。普段の授業でも個性の節約が上手いのだ。
「轟さん!」
すれ違いざまに誰かの鉢巻をかっ攫う。まあまあの点数。が、俺らが求めているのは一千万だ。爆豪ではないが完膚なきまでに。圧倒的差を見せつけて。
「そろそろか……準備はいいか」
先の障害物リレーでは氷結を避けられてしまった。特に同じクラスの奴は俺がこうするだろうということを予測していたらしい。
「しっかり防げよ!!」
＿＿＿＿同じ手を2度も掛ける程阿呆じゃないんでね
俺もだ。
＿＿＿＿＿＿＿＿
轟チームによる足止めで、多くのチームがポイントを失っているようだった。上鳴の放電により地に足をついていた者らを感電させ、予め八百万に用意させていた伝導棒を伝い一気に轟による氷結。確実に動きを鈍らせてからの氷結。先の障害物リレーで氷結を避けられた事を省みているのだろう。この戦略を立てたのは轟か、飯田か、八百万か。いや、轟だろうか。このメンバー、最初から作戦があっての集いなのだと思う。
対峙する轟と緑谷。二人の間に特別な仲を感じたことは無いが今は、お互いのみしか見えていないようだった。緑谷らの進行方向に氷塊を作り上げ、着々と道筋を潰していく。やがて、緑谷チームはフィールドラインぎりぎりまで追い込まれてしまった。1000万ポイントは未だ緑谷が持っている。今の今まで何とか逃げ切ってきた緑谷チームだが、こうも詰められると厳しい展開だ。決して甘くはない。
「委員長……」
「轟の狙いは、最初からそこだったんだろう」
勝負は、武士のみではない。武士を乗せた騎馬も、重要なカードになる。
飯田がぐっと姿勢を低くし脹脛から光が漏れ出す。脹脛のエンジンにより、爆速的なスピードを持つ個性。レシプロバースト。
そして、
「轟チーム!!1000万ポイントォォォォォ!!」
沸き上がる歓声。一気に0ポイントまで下がったたのは終了まで残り2分弱のときだった。
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
