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玲子の個性は結晶化である。
一見、何も無い所から結晶を生み出すので発動型と見える。実際、緑谷もそう思っていた。基礎学の実践授業では、個性や肉体をふんだんに使った肉弾戦よりもトラップを仕掛けたり戦闘せずして勝つという頭脳戦の方が多い為じっくり見たことがなかった。が、注視してみれば個性発動時は必ずどこかに手を触れさせており、また本人にも教えて貰って、発動型ではなく変形型だと知った。結晶化させる物は何でも良い。セメントスの上位互換個性だと緑谷は思った。
「飯田君とか爆豪君とか……身体そのものに個性のための器官があるじゃない?器官っていうと違和感があるけど体質でもないし上手く言えないけど」
「うん。分かるよ。峰田君や耳郎さんもだよね」
「そう。そんな感じで。その人達ってさ、発動型と変形型と異形型が全部ごっちゃになってるように思うの。教科書に載る人体では有り得ない器官とか、体質とか。見た目でぱっと見で判別出来ないのもある」
個性婚というのが流行ったこともある。それだけ個性というものは多種多様で奥深いものなのだ。
「緑谷君は変形型なのかな?増強系の」
「そ、そうだね!ワ、超パワー!」
「いかにもヒーローって感じだよね」
思わず禁句のワンフォーオールを口にしようとして慌てて言い直す。玲湖はそれに気付いているのかいないのか、緑谷の方は見ずにただ笑っていた。
この笑い方は初めて見る。普段から笑顔でいる玲湖だが、もっと飄々とした感じ、若しくは挑発的な笑みを浮かべる事が多い。今のように何処か寂しげとも捉えられる笑顔を向けられるのはこれが初めてだった。
「私の個性……結晶化っていうんだけど。正しくは結晶化させる血液、って感じかな」
「けつ、えき?」
「そ。私の血に触れたものを分解して結晶化するの」
複合型の個性とは乃ち個性が合わさって生まれる個性だ。その多くは両親から受け継がれるものが多い。その特徴に、身体機能の進化がある。
「隔世遺伝とか?」
「違う。両親の血筋に結晶とか、血液とかの系統の個性はいなかった」
勿論正真正銘親の子だけどね、と玲湖は笑った。
「話を戻すけど、個性の発動条件は私の血に触れることだから、触れてしまえばあとは自由。つまり遠隔でも発動できる。ある程度自分の近くでないと出来ない事もあるけどね」
「………………ね」
「え?」
ノートに書き込む手はいつの間にか止まっていた。顔を上げ、玲湖の顔を見つめる緑谷。
「それは、とても寂しいねって」
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
