拘泥 ページ41
カラカラに乾いた喉に、声がへばりついて剥がれなくなっていたようだった。思わず、彼の方を見いたけれど視線は一向に合わない。つい先程、轟君が第三関門に入ったところで興奮しきったプレゼント・マイクは私とイレイザーに気付いていない。
「お前ならどう攻略する」
何を、とは聞かない。態とらしく聞いてやろうかとも思ったけれど、突き刺さるような声色した彼をはぐらかそうとしても逆効果だろう。雄英体育祭、第一予選。障害物リレーなんて名付けられたけれどそんな可愛いものじゃない。入試用ロボに綱渡り、最終関門には地雷と確実に落としていくつもりの競走だ。こんなの、並大抵の一般人では突破出来ない。主な目的は次世代ヒーロー達の宣伝なのだから普通科やサポート科などヒーロー科以外の生徒は大概が落とされるのだ。足元掬う宣言をした、ヴァイオレットの彼は今、何処にいるだろうか。
宣伝目的の体育祭は、私には必要無いものだ。私の就職先は世間様の平穏を守るヒーローではなく、宣伝やアピールなど塵ほどの役に立たない地下深くのアングラ中のアングラなのだから。寧ろ、世間の注目を浴びるのはタブーでもある。だから、この体育祭に出る前提の質問をした彼の意図が掴めない。
「私は……」
何かを言わねばと、やっとのことで声を絞り出した瞬間、遠方で爆発が起こった。モニター越しに地雷エリアにいた人たちが爆撃に吹き飛ばされているのを確認した。一瞬爆豪の顔が頭をよぎるが彼は先頭を轟と争っている為こんな後方にはいない。誰かが地雷に引っ掛かったといっても、一つでこんな威力は発揮しない。となると、爆破系の個性か、はたまた故意に複数の地雷を爆破させたか。モニターは直ぐに先頭の二人に移された。轟も爆豪も足を止め、二人して上を見上げている。その視線の先を追うと、
「みっ緑谷だああああああああああああ!!!!」
見覚えのある緑がかった癖毛が、爆風に乗って先頭二人に追いついた。慌ててた爆豪と轟が足を進めるも、緑谷は手にした破片……恐らくロボのボディであろうものを再び地面に叩き付けた。
「……すご」
「イレイザー!!どーなってんだお前のクラス!!」
緑谷によってトップを走っていた二人が吹き飛んだ。そして緑谷はスタジアムまで一目散に走り抜けていく。
「一体誰がこんな結末を予想していただろうか……」
大きな歓声が場内に響き渡る。
そして、その瞬間は来た。
「緑谷出久の存在を!!!!」
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
