4 ページ40
雄英体育祭で、玲湖を一日自宅待機させようとの案も出た。クラスメイトには多少疑われようと適当に理由をつけて。リカバリーガールの補助役の案を出したのはオールマイトだ。
出場はさせることが出来ないがせめて、同じ空間にいさせねばならないと。これ以上距離を離してはいけないと。渋い顔をする教師もいた。が、オールマイトの説得及びリカバリーガールの推薦、最終的には校長も玲湖を引き離離すのは良くないと仰り、結局監視役の俺の傍を離れられないにしても玲湖が体育祭を欠席扱いになるのは免れた。参加出来ない者に、クラスメイトの姿を見せるのはどうかとも思った。が、今なら言える。その判断は、間違っていなかったと。
入学から今までのこの僅かな期間で、玲湖の性格というものを多方理解したつもりでいる。教師やヒーローに対し嘲るような態度を取ったり、ある程度手を抜いたりと問題児揃いのうちのクラスでも扱いの難しさはトップクラス。ヒーローを目指してはおらず成績こそ一定ラインをキープしているが抜けんでているものはない。恐らく、いや確実に態とであろうが。頭のキレは本物だ。元々の才能と、幼少期の努力、そして向こうにいたということ。誰よりも自分の個性について熟知しており、戦略を立てるのも上手い。圧倒的な攻撃力も、スピードも、偵察力も、何も無い。あるのは経験値と立案力。うちのクラスで1番目立つ戦闘センスの持ち主は爆豪だ。派手な個性に加えてキレる頭、類まぐれな身体能力。それ等を充分に生かすための肉体と、それ等をこの歳で作り上げたタフな精神力。粗暴な言動に反し思考は冷静で、的確な状況判断と相手の弱点を探る能力に長ける。ヒーロー基礎学のどの科目においてもトップを走り抜ける彼の影に、玲湖は隠れていた。爆豪のように目立ちはしないが要所要所で発揮される玲湖の才能。いかにローリスクでハイリターンを得るか。自陣と敵陣の能力を考慮し、より速くより正確かつ低労働な作戦を立案してみせるのはいつも玲湖だった。
玲湖が体育祭に参加していれば、また順位が大きく変動したかもしれない。自身だけではなく個性について熟知した玲湖であるならば、トップをもぎ取る事も可能だったかもしれない。
クラスメイトを見る玲湖の目には少なからずの羨望が滲んでいた。自由に個性を使う彼らを見て。玲湖には、許されなかった事だから。
だから、もう一度聞くのだ。
「お前なら、お前だったら────」
その瞬間、一つの爆音が会場内に轟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
