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玲湖の両親は無個性だ。超人社会となった今、世界人口の約2割程しか存在しない無個性の人間が生活を送るという事がどれ程難しいか、それは当事者達でしか知り得ない。個性があるという事が当たり前になったこの時代、玲湖は個性に触れることなく個性の発現を迎えた。通常、個性の発現は3歳から4歳までとされている。異形型の場合は少々異なり、誕生した時既にその姿を持ってして産まれるが、多少の個人差はあれど発動型変形型は大抵が幼少期だ。だから殆どは親の個性を見て育ち、個性とは如何なるものか幼いながらも何となく理解して育つ。のだが玲湖は違った。しかも、平均よりも早い、3歳前の発現だった。それに、幼き玲湖がどのような反応を示したのかは分からない。自分が怪我した事も忘れ生み出された結晶にキラキラと目を輝かせたのか、得体の知れない現象に恐れ慄いたのか。しかし魚住夫妻にとって玲湖の個性発現は全くの想定外であっただろう。親2人が無個性なのだ。まさか生まれた娘にある筈のない個性が宿るとは思わなかった筈だ。
現代では当たり前となった個性について、玲湖がどのような感情を抱いているのかは知らない。世間では当然だとしても、魚住家にとって個性は別世界のもの、テレビに流れるヒーローが戦うニュースはファンタジーであるという認識だった。両親に無いものを持ち恐れられ、必死で制御を体に叩き込んだ玲湖にとって個性とはどのような存在なのか。頼れる大人はおらず、たった独りで自身の力と向き合い理解して。
ひょっとしたら、個性など要らないと思っているのかもしれない。個性が発現しなければ、両親に恐れられたり気を遣ったり、制御に勤しむこともなかった。要監視対象になることも不自由を言い渡されることもなかった。親戚に当てはなかったが、施設にでも入って、やりたい事を見つけて行きたい学校に入って。今まで一つも、玲湖の望んだ通りに事が成されることはなかった。拒絶も反抗もしない玲湖だったから此方の都合の良いようにされて。
「……なあ玲湖」
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
