連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ37)

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羨望ページ37

爆豪による挑発的(的ではなくあれは唯の挑発であった)な選手宣誓で一悶着あったが、体育祭は着々とプログラムに沿って進められる。メインはヒーロー科であるが、先日の普通科の少年の言った通り体育祭にはどの学科からも出場出来る。とはいっても普段の授業カリキュラムで戦闘訓練を行っているヒーロー科と、学校内外に拘らず個性の使用が制限される普通科アイテムに頼り切りなサポート科の違いは歴然だ。開始直後に繰り出された轟の氷結により大多数が身動きを取れなくなる中、八百万を初めとしたA組、後ろのB組も氷結を避け前進する。伊達に殆ど毎日のように競い合って技を盗み合っているのだ。轟はあまりクラスメイトと関わりを持たない人間ではあるが、本人の自覚有無関係なしに強個性として注目は充分浴びている。皆、相手の分析はしてきたのだ。

「ロボインフェルノオオオオオ!!!」

スタートさて直ぐに現れたのは、入試にも用いられた仮想ロボットだ。しかし、巨大なそれも彼の手を煩わせることはなかった。

「……あー」

思わず声を漏らしたのは、彼の思惑に気付いたから。一瞬の内にロボを氷像へと変貌させた轟は振り向くこと無く進む。続こうとした者は揃って動きを止めた。ぎしり、と不安定なままに固められたロボが傾いた。態と、タイミングを見計らったのだろう。しかし、幾人かは倒れる前に飛び越え後方との距離を広げていった。先の選手宣誓で一位になる宣言をした爆豪は、随分先を行く轟を追いかけるべく個性をふんだんに使い前へ前へと進んでいく。そんな彼等に続こうと、我に返った者達もロボットへ向き合い出す。轟の策略の倒れゆくロボを避けなかった切島と、もう一人B組の生徒は類似した個性のようだ。身を硬くする事で無傷な二人も走り出した。個性だだ被りじゃねえか、という切島の嘆きが中継カメラを通じて玲湖にも伝わり、思わずクスリと笑みをこぼしてしまった。
次に待ち受けていた第二関門は、言わば綱渡りだ。とは言っても先頭を行く轟にとっては何も問題はない。綱を凍らせ、滑るように進みあっという間に突破する。そのあまりの速さにプレゼントマイクも興奮し後ろの者を煽っていく。複製腕を翼のように広げた障子が、ムササビのように滑空していくのが見えた。各々が、自身の個性を存分に使い上位を目指して奔走している。玲湖はただ、客席に近い位置から見下ろすのみだ。気付かぬ内に強く噛み締めていた下唇からうっすらと血が滲み、不快な鉄の味が舌先を侵した。

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