連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ36)

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時は少し遡る。
体育祭当日の今朝、玲湖はいつもより幾分早い登校だった。このところほとんど毎日といっても過言ではない程登校中遭遇していた青山も今日は現れない。勿論、それを狙ってのことだったが。体育祭に出場しない玲湖が出場前の選手達に会うのは気が引けたのだ。それに、一応今日はスタッフという名目なので準備もあるだろうといつもより一時間程早く起き、家を出たのであった。

「……すまん」
「いえ。お構いなく」
「まったく……いつまでこんなくだらないことを続けるつもりなのさ彼方さんは」
「はあ」

学校に着くなり早々に着替えて向かった先は保健室。扉の先に待ち構えていたのはリカバリーガールと

「な、……お早う」
「おはようございます」

苦虫を噛み潰したような顔をした担任だった。玲湖の姿を捉えると一瞬、辛うじて包帯の取れた両目を見開いたが直ぐにいつもの気怠い表情に戻った。が、その中に滲むものから何やら彼にとって良くない事が起きたのだと察した。

「あー……まあ丁度いい。変更だ、魚住」
「変更?」
「今日は一日、俺と行動せよとのお達しだ」
「あー……成程」

その言葉で充分だった。まだ、自分は鎖で繋ぎ止められたままだったと。成長の過程で少しず鎖は長くなったが、まだ外れはしない。それどころか締め付けは変わらない。

「お前には悪いが今日はあっちの人も来るそうだ。下手な事すると此方も危なくなる」

それもそうだ、と玲湖は思った。彼らはベクトルが違う。全くの別世界の住民なのだ。表立つ事は決してなく、あくまで水面下で密かに動く。そして、卒業後の玲湖の行き先であった。彼等については、玲湖の方が詳しく知っていた。下手な抵抗は返って此方の首を締めるだけ。無駄な労力は使わず大人しく従うのがこの場では得策だった。

「とは言っても生徒らにはサポーターで通したんだ。必要となればみっちり働いてもらうさね」
「はい」
「じゃあこれ、腕章だ。開会式お前はアナウンスルームな」
「え、まさか」
「まさかだ。耳栓貸すか」

担任の手から腕章を受け取ろうと手を伸ばす。が、相澤は一向にそれを離さない。不審に思った玲湖が仕方無く顔を上げると、包帯まみれの顔から除く漆黒と目がかち合った。じ、と見つめられ黒い中に玲湖の姿が写るのが見えた。

「……すまない」
「…………」

ふ、と笑みが零れたのが自分でも分かった。途端にとてつもなく可笑しく思えてきたのだ。

「何だ」
「いえ」

たのしみですねぇ、これから。