連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ34)

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冷めた米を前に手付かずの私に酷く同情した顔の彼。何のことかさっぱりな幼い自分は確かそうですかとか何とか返したような気がする。しかし彼はそのまま独り言を続け、節々からエンデヴァーが結婚していること、子供が四人いて、私と同い年らしい一番下の子はとても素晴らしい個性を持っているということを知った。
ああ、個性婚か、と悟った。思えば、私も個性婚といえば個性婚だったと言える。エンデヴァーが強くて有能な個性を求めたのと反対に、うちは無個性同士だったが。その、息子の個性がどういったものかは知らなかったけれど雄英に来てすぐに分かった。氷と炎。そりゃ最強だ。チートにも程がある。確かに、轟焦凍は個性婚の成功作だった。無個性同士から生まれた個性持ちの私は成功作なのだろうか。いや、失敗だっただろう。本来ならば相対する二極が一つの体に宿っているのは見てすぐに分かった。両親共々の個性が眩く反映された彼。エンデヴァーが固執するのも分からないでもない。
彼の口から聞いた訳ではないから、実際の事は分からない。それでも察するところは何処か私と正反対なようで似ていると思った。
親の血を受け継いだ彼と、親そして双方の血筋には全く関与のない個性を持った私。けれど彼は父親の個性を使わないし、私はアンチ個性に傾いた思想だと見なされている。否定はしない。でもきっと、彼が二つの個性を使うのならばもっと強くなるし、将来的にはエンデヴァーをも凌ぐようになるだろう。個性の使い道は誰より、それこそオールマイトよりも幅が広い。きっとそんな事は彼も知っている。けれど彼は父方の個性はあくまで氷結を溶かす時にしか使わない。左側を溶かす時の何も感じていない表情の裏にドス黒い物が燻っているのが印象的であった。

(盲目……一つに執着しすぎて他が見えてない)

それがどういったもので、何に向けて、何の為に成すのか、知る由もないけれど。
これはただのエゴイズムで、自分の欲求を満たす為だけの行為であると知っている。他人の家庭事情に深入りするなんて不躾にも程があるし、そもそもそんな口が出せる程の立場に私はいない。こういう時(・・・・・)の対応は、人によるけど大抵は放置が一番だ。下手な言葉は余計に拗らせるだけ。馬鹿みたいに偉そうな顔して言う権利はどこにも無いくせに。
少しだけ逸らしたら見えるものが、見えないのは勿体ない。

「……なりたい自分になろうね」

前途ある彼へ。矢印にさえならないけれど。