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「誰だっけ……ああ、緑谷君。そう緑谷君が言ってたけど」
俺は自分で作った氷の台から一歩も動けないまま、結晶は相変わらず俺の頸動脈を狙ったまま。唯一動けるのは魚住だけで、いつもと変わらないトーンで話し始めた。
「私の個性と似てるって。とどさんの個性」
「………………」
「轟君もそう思ってた?残念別物なんだよ」
魚住は俺の目の前まで来て両足揃えて止まった。にこりと微笑んでから俺の首元で静かに狙いを定めていた結晶に触れる。たちまち透明のそれは音も立てずに無くなっていく。
「どちらかと言えば爆豪君とか委員長に近いんだよね。そりゃまあ、見た目は似てるだろうけど。元のタイプはぜーんぜん」
そう言って魚住は一つに束ねていた髪を下ろした。赤みのかかったストレートが華奢な肩に落ちる。相変わらずの細い身体。体操服の袖から覗く白い腕は締まっている。雄英ヒーロー科の体育の授業は中学のような球技だの陸上だのの競技系は少なく、ほぼほぼ筋トレや持久走などのトレーニングだ。2週間に1度の確率で競技の授業らしきものが組まれる。授業、というか息抜きのレクリエーションみたいなものだが。個性使用なしのバレーボール大会だのドッジボール大会だの。なので嫌でも筋肉は自然につく。ヒーロー基礎学に加えた身体作りのお陰で俺もそこそこ筋肉は増えた。魚住も多少なり筋肉はついたようだがそれでもまただ。女は筋肉がつきにくいのもあると思うが。
また、負かされた。単純な身体能力では遥かに俺に劣る此奴に。
「如何に最小限のリスクで最短の時間で仕上げるかが勝利の鍵。その為には自分だけじゃなくて他の状況も熟知する必要がある。……まだまだだね轟君。個性の扱いに関しては私の方が上な訳だ」
「………………」
魚住は笑う。魚住の結晶がすっかり消え、後に残ったのは俺の氷のみ。部屋一面に散らばる大きな氷塊により部屋内部の温度はかなり冷えている。
「悔しい……というより疑問?かな。何で私の勝ちなのか。それはねえ」
果たして、この時の魚住はどんな顔をしていただろうか。
「私の事を見てないからだよ、轟君。誰に重ねてるのか知らないけど。よっぽど余裕なのかな」
「てめぇ……!」
「半冷半燃」
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
