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この世界は平等ではない。それは、4歳で知った事実。僕は正真正銘の旧人類だ。足の小指の関節は二つある。人口の2割という無個性、個性を持たない人種。そのせいで、僕は両親を始め学校、地域から対等な扱いを受けることはなかった。無個性だからしょうがない。無個性だから劣っている。無個性だから守らなくてはいけない。無個性だから。何度このフレーズを聞いたか。画面の向こうのオールマイトを観続ける僕を抱き締め涙を流しながら謝るお母さん。無個性だから変に過保護になる先生。心の籠らない、定型の文章で慰める医者。後ろ指差して笑う同級生たち。
無個性で何が悪い。無個性だから出来ないことなんてない。個性さえ抜けば、他と何も変わらないのに。
劣等の血筋と。どうしてそんな事を言われなければならないのか。
両親が無個性であるという魚住さん言葉に噛み付いたのは、心からの本音だ。
「無個性は劣等なんかじゃないよ。私が一番知ってる」
何たってその子供だからね、と魚住さんは笑った。
「私が此処にいるのが一番の証拠。ちゃんと真っ当に、育てて貰った」
濁りのないその瞳に、何故だか涙が零れそうになった。この気持ちは、いつかの夕方と同じ。僕に手を差し伸べ、ヒーローになれると断言された時のような。ずっと欲しかった言葉を貰った時。
思えば、今もあの時と同じ夕方だ。窓から差し込む光がカーテンや僕が横たわるベッドを橙に染め上げている。光を背に受けて微笑む魚住さんが、あの日のオールマイトと重なって見えた。
「……敵が私の事を知ってたのは、その事件があったからなんだろうね」
それを聞いて、死に損ないの意味がやっと分かった。犯人と遭遇しても、両親が襲われても生還した子供だったのだ。それは、魚住さんが個性を持っていたから。世にも珍しい、純無個性から産まれた個性持ち。敵側が目を付けるのも頷ける。
「ちなみにリカバリーガールは私の後見人ね」
「あ、それで名前を……」
「そ。あんまり知られていい事じゃないから、内緒ね」
「う、うん。分かったよ」
「あはー、誰かにバラしたら結晶で封印しちゃうから」
「………………」
「本気にしないでよ」
「へっ!?いや、うん!誰にも、誰にも言わないから!!」
「必死すぎだよ緑谷君。じゃあね、私行くから。ゆっくり休んで」
「ああ、ありがとう。……あの、また話聞いてもいいかな」
思わず声をかけると、魚住さんは一瞬きょとんとした後にっこり笑ってくれた。
「もちのろんだよ」
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
