連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ30)

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第一印象は、あまり覚えていない。クラスの奴と特別仲良くやっていこうとは思っていなかったから自分の席を探して大人しく座っていた。途中、飯田とか言う奴が律儀にも自己紹介してきたから短く返した。担任が言っていた通り仲良しごっこする為に此処に来た訳では無いのだ。入学式やガイダンスをすっぽかして突如開始された個性把握テストの傍らクラスの奴の顔と名前、個性の最低限の情報を得た。担任のあからさまな虚偽の宣言に騙されている奴等を冷めた目で見ていた。そこに、魚住の印象は残っていない。体力テストでは各々何かしら一山突き出た記録が出ることが殆どだったが、此奴は何でもなかった。緑谷という奴も途中まではぶっちぎりのドベだったがボール投げで指ぶっ壊して上位の記録を叩き出していたのを覚えている。ランキング形式で表示されたホログラムの、一番下にあった魚住玲湖という名前が、俺が初めて認識した魚住の情報だった。
姿をハッキリと見たのは翌日の戦闘訓練の時。俺も人の事言えないが、周りと比べシンプルでヒーローコスチュームらしからぬコスチューム、しかもヤンキーのような格好をした魚住は緩やかな笑みを浮かべつつも俺の個性を無効化した。体力テスト最下位で誰もが注目していなかった展開。余裕の表情は崩れること無く呆気なく俺の動きを封じて去っていった。訓練の後、魚住の個性を初見したクラスメイトらが駆け寄って行くのを見た。
そしてUSJ。入学したてであるというのにいきなりの実践。教師陣が苦戦する中、慌てふためく中魚住は汎用性の高い個性を自在に操り誰よりも手慣れていると感じた。お得意の緩やかな笑みはそこになかった。自らの血を媒介に物質を結晶化させる個性。攻撃防御、簡単な応急処置まで熟す魚住の不自然さに気付いたのは何人いるか。1-Aの奴等は夫々の場所で突然の事ながらも対処していたが、魚住は郡を抜いていた。普段通りの敵顔負けの形相で黒モヤを捕えた爆豪も、それに続いた切島も、俺も、激しい戦闘の後ではあるがオールマイトさえも反応出来なかった緑谷の特攻を食い止め敵と対峙した魚住。躊躇いのない判断は明らかに俺らと違った。思えば、度胸というか怖い者知らずな一面もあるのだ。初日から担任に食ってかかったのもそうだ。誰に対しても怖気ず平気で自分の言いたい事は言う。常に余裕があり一歩先を見据えるその姿は誰よりも老成していた。

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