連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ28)

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轟の柳眉が僅かに釣り上がる。そういえば、柳眉という表現は女性に使うもので本来は男性に向けて使うものではないらしいがまあそれは置いておいて。いつかのクラスメイトの発言を思い出す。それは自分に向けられたもので、美人の真顔ほど怖いものはないだかなんだか。自分に言われたものだからよく分からなかったが、今になって実感した。轟焦凍の顔はそれはもう整っている。ヒーロー科合格条件に見た目麗しさも含まれているのか、男女共に整った顔立ちをしているものが多いが、轟焦凍は特にその中で群を抜いている、と玲湖は思っている。ピクリとも動かない美しい顔はまるで絵画や彫刻のようだ。美人の真顔、というより無表情は確かに怖い。今、身を持って理解する。

「何でだ。お前出ねえからいいだろ」
「え、出ない?何が?え、体育祭?」
「ああ。出場するやつならこっちの手の内バレちまうがお前ならと思った。他の奴に教えるような奴でもないし。もう予約しちまったんだよ、なあいいだろ」
「あ、ああ」

漸く察した。この人はどうも言葉が足りない。つまりはこういう事だ。玲湖に、自主練の相手をして欲しいと。予約というのは訓練ルームのことだ。天下の雄英、個性使用可の特別に頑丈な部屋がいくつかある。申請したら誰でも、それこそ1年だろうが3年だろうが、教師陣も使用することが可能だ。年中そこでトレーニングをする生徒も多い。轟はその施設を使う申請を出したそうだ。体育祭のために。玲湖が選ばれたのは単純に体育祭不参加であるからに違いない。普段は協力し合うクラスメイトだが、体育祭では皆が敵だ。授業内でお互いの個性についての情報は多い。玲湖であれば、幾ら手の内を知られても不参加の為戦うことはない。練習には手頃な相手だと轟は思ったのだ。それら全てを凝縮したのが、例の付き合ってくれ発言。本当に、圧縮するにも程がある。溜め息混じりに玲湖は苦笑を浮かべた。

「それ、狡くね?」

周りのクラスメイトも、轟の真意に気付いたらしい。上鳴がぽつんと零したそれに、同調していく。

「確かに、魚住に相手してもらうのは一人で訓練するよりもメリットが大きいが……」
「玲湖ちゃん強いしね!」
「でもよ、ちっとフェアじゃなくねえか?轟」
「……だって、轟君」

クラスメイトの指摘を受け、チラリと轟を見やる。が、彼の表情に一切の変化は無く、そして薄い唇が開いた。

「使えるもんは使う、それだけだ」

なんだそれ、私はサンドバッグか。