連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ23)

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陰影ページ23

「雄英体育祭が迫っている!!」

目をカッと見開き声高らかに宣言する包帯まみれの担任と一気に盛り上がりを見せ雄叫びを挙げるクラスメイトたち。それらを眺め、玲湖は静かに溜め息を吐いた。前の席の飯田が、左隣の砂藤が、その他諸々が、拳を突き上げるなり万歳するなり興奮した様子だ。
先日、敵の侵入を許したばかり、しかもプロヒーローが大怪我を負っているというのに強気にも催されようとする雄英体育祭。その理由は簡単だ。国内最高峰を誇る雄英高校の体育祭はたかが敵の侵入どころで中止出来る程の規模の大きさではないからだ。超常の起こる前、個性など勿論の事ながら存在せず、己の身体能力のみでスポーツの頂点を争うオリンピックは形骸化し、それに代わる祭典として生まれたのが雄英体育祭なのだ。そしてそれは参加する雄英生徒にとっては全国の事務所や世間に自分の存在をアピールする場でもある。

(こんな、馬鹿馬鹿しい行事の為に自分の体を押すなんて……本当は合理主義じゃないでしょ)

「時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回……計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

目立てば目立つ程、見るプロの目は多くなる。この行事で、今後の将来が決まっていくこともあるだろう。しかし目立つ事の出来る人数は限られている。予選を勝ち抜き、より高い位置に着かなければ意味がない。同業者同士で競い合って何になるというのだ。そんな、そんな下らない事をしている場合があったらボランティアだの奉仕活動だのに参加していた方がヒーローらしい。
ヒーローは、エンターテイナーではないのに。
と言っても、ヒーローになれない死に損ないがヒーローが何たるかを語る大層な口を持って許されることはないのだ。
ムカムカと胃から競りあげてくるものをどうにか堪えながら玲湖は口元に笑みを浮かべる。ざわめくクラスメイト達に向ける苦笑ではない。矛盾する担任に、下らない行事に、本来の存在意義を履き違えるヒーローに、そして成れもしないスタートラインにすら立てない自分が自らの分際を弁えなかった事への自嘲の笑みだ。

「混乱するだろうからお前達には先に伝えておくが……」

しかし玲湖は気付いていない。そのムカムカとする嫌悪感、違和感の根本たるものを。

それは、数十分前に遡る。