連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ3)

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困惑した僕を見て、魚住さんは楽しげに笑った。

「まあびっくりだよね、個性持ちの口から無個性狩りが出るなんて。私もまさか緑谷君が覚えてるとは思ってなかった」

「あのね、緑谷君」

魚住さんは笑顔のままだ。
初めて話したとき、第一印象の冷たい雰囲気とは違ってよく笑う人だと思った。落ち着いていて聞き上手で、教室でも誰かと談笑しているのをよく見た。いつも笑っているのが魚住さんだ。けれども今のこの笑みは、ただ楽しいとか嬉しいとか、そんな気持ちなんかじゃなくて。

「私の両親ね」

それは、よく知っている。どうにもならない事を諦める時。
じわりじわりと身体を蝕む嫌悪感。行き場のない怒り。全てを投げ打ってしまいたくなる衝動。それらを全部受け止めて、飲み込んで咀嚼して、どうにか自分の中で折り合いを付けて。

「私の両親は無個性なんだよ」

まるでいつかの僕のようだった。

困惑。戸惑。動揺。狼狽。
目の前の彼女が言った言葉が頭を駆け巡る。両親が無個性(・・・・・・)。

「えっ…………」

有り得ないことでは、ない筈だ。だって、僕だって両親は個性があるのに無個性だったから。それでも藁の山から極細の針を見つけるようなほんの僅かな確率だ。個性の遺伝についてはまだ明確な事実が判明している訳では無い。両親の個性のどちらかをそのまま受け継ぐ場合もあれば、例えば轟君のように両方受け継ぐこともある。また、隔世遺伝もあるし、家系と全く違う個性もある。後は、無個性だったり。無個性の親から個性を持った子供が産まれる。確かに、最初の個性の発現である発光する赤子の両親は当然のことだが無個性だから、有り得ないことはない。

「それは……その」
「ん?ああ、ちゃんと血は繋がっていたよ?」
「そうじゃなくて。魚住さんのご両親は……」
「そ、無個性狩りの犠牲者」

無個性狩りの結末は、何とも呆気ないものだった。犯人グループらしき集団を見たと通報が来て駆け付けたヒーローが捕獲し、犯人達は収監された。青白い顔した痩身の女性アナウンサーが淡々と読み上げていたのを覚えている。

「……会ったんだ、犯人に」
「でも魚住さんは個性があるから」
「まあ、ね。でも向こうも驚いただろうね。まさか、純劣等の血筋から個性持ちが産まれるなんて」
「……無個性は劣等なんかじゃ」
「知ってる」

知ってるよ、と繰り返した魚住さんの目はじっとこちらを向いていた。薄い魚住さんの瞳に映る僕の顔は何とも情けないものだった。