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また直ぐにいつもの澄ました顔を取り戻した玲湖が語ったのは昨日のUSJ襲撃の時の敵に関しての事。死柄木という敵が玲湖の名前を口にし、また例の事件について目撃したととれる発言をしたということだった。
「犯人は全員逮捕した筈だ」
「ええ知ってますよ。それに昨日の襲撃は彼等の思想に背いている、共犯の可能性は薄いでしょう」
────無個性という旧人類は我々新人類の進化の枷となる存在。劣等の血筋の完全排除を。全ては我々の栄光の為に。
旧人類の純血である子供が新人類であったという極めて稀なケースである魚住玲湖という名前は一定年齢を越したヒーロー達にとっては周知のものだ。生い立ちから例の事件、最終的な処分まで、それは万が一を懸念してのことだった。そして敵側も然り。個性やその扱い、そして玲湖の境遇は敵にとって引き入れるのには申し分無い。だから、雄英なのだ。本人の察しの通り、制御や監視の名目の裏側には敵堕ちの防止もある。本人の口からヒーローが、敵が云々を聞いた事はない。が、後見人であるリカバリーガールや玲湖のメンタルケア担当の話を聞く限りどうもヒーローも敵も大して変わりはないといったニュアンスの事を口にした事があったらしい。それでも、あちら側に引き摺り込まれることは避けねば。
根は、素直だ。此方の理不尽に大して文句一つ言わず(きっと正しい対応とやらであると判断したのだろう)、決められた枷を守り自ら首輪を嵌めた。不合理極まりない一方的に取り付けられた約束を律儀にも守っていた。懸念された問題が起きることもなかった。素直で、真面目で。
「……13号にオールマイトさん、緑谷の応急処置もしたらしいな」
もう用件は済んだとばかりに帰り支度をする玲湖に声を掛ける。ぴく、と普段は飄々と笑顔を浮かべる顔に、あからさまな動揺が浮かんだ。
「ええ、まあ」
メンタルケアをした担当は、記憶を覗き見る個性を持っていた。暴れた時に備えベルトでベッドに繋げられた玲湖の記憶を垣間見た担当は複雑な表情を浮かべてたらしい。担当に渡された資料には少しだけ記されていた。平均よりも個性の発現が早かった玲湖は、幼いながらも悟ってしまった。両親と自分は違うのだと。自分の持つこの力は容易に人を傷付け、そして恐れられていると。そんな、まだ3つの子供に理解することが出来る事ではなかっただろうに。いや、きっと幼かったからこそ、何か感じることがあったのだろう。
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
