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鋭い声が轟を遮った。ぽかんと呆けて口を開けたまま固まった轟を見て、やってしまった、と玲湖は後悔する。落ち着いている、なんてことはない。今の様に考える前に口を挟んで仕舞うことなんてざらにある。いつだって、自分は慌てふためいているのを必死で隠しているだけで、轟や蛙吹の言うような冷静な判断なんて欠片も無いのだ。
「推薦合格のとどさんに褒めてもらえるなんて光栄だね」
「誤魔化すな」
表情は笑みを浮かべたまま、玲湖は心の中で深く溜め息をつく。ダメ元で話を逸らせるかと思ったが、まあ到底無理な話だった。隠している訳ではなくないのだが、余り大っぴらに話したくはない。が、隠す道理も理由も、轟を納得させるものは思い浮かばず玲湖は潔く白旗を挙げた。
「私は個性の発現が平均より早くて、3歳になる少しの前に出たの。転んで擦りむいたところから結晶が形成されてね。私は勿論、親が凄く驚いてた。まさか、ねえ、無個性の純血が個性持ちだなんてね」
「個性の制御はどうしたんだ」
「自力で何とかした。というか、何とかしなくちゃいけなかった。両親と自分は違うってことを何となく察したのかな。聞いたって答えが返ってくる事はないから自分で見つけるしかなった。自分の個性については何でも試したよ」
今思えば自分凄いね、と玲湖は笑った。真っ直ぐ前を向いたままで目は合わない。瞼が伏せられ、白い肌に睫毛の影ができていた。
「周りの大人は」
「無個性の人間に手を差し伸べる人が簡単に現れる程、この世界は優しくない」
「………………」
「両親共に仕事はあったけど、やっぱり周囲からは孤立しててね。仕方の無い事なんだろうけど。駆け落ち同然で結婚したらしいから祖父母も頼れなかった。保育園や学校の先生も然り。それに個性が個性だったから一人で何とかする他になかった。5歳になる頃には、自分の出来ること出来ないこと把握してほぼ完璧に制御出来るようになったよ。色んなヒーローの動画見て真似できるか研究してね。応急手当やなんかはそこからの受け売り。物質操作系統のヒーロー調べまくって。親には迷惑掛けた」
「それは、すげえ」
その一言は素直に零れた言葉だった。凄い。5歳、といえば丁度親の訓練に辟易していた頃か。個性の制御もまだ不完全で、そして。
「でしょう?自分でも驚き。毎日どこかしらに傷作ってね。アクティブだったんだねえ」
「親は」
「いくら血の繋がった娘だとしても、劣等感は隠せなかった」
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作者名：英 | 作成日時：2018年1月21日 23時
