連星αに捧ぐⅡ【僕のヒーローアカデミア】 (ページ2)

今日:16 hit、昨日:2 hit、合計:7,713 hit

劣等ページ2

「すごい……何で覚えてるの」

────それは僕が無個性だったから。
その言葉を必死で飲み込んだ。
魚住さんは驚いて目を見開いた後、またすぐに笑みを戻した。何処か泣きそうな顔。ヒーローコスチュームのままの魚住さんはいつもより華奢に見えた。

無個性狩り。
六年前、海外の敵が日本で暴れている頃、もう一つの事件があった。決して小さくない事件だけれど、世間の話題は海外からの敵の方に持ち切りで、大した報道もされていなかったと記憶している。無個性のみ限定して最終的には17件に及んだ連続殺人事件。犯人は5人グループで、その中のリーダー格は個性の有無を見極める個性を持っていた。

────無個性という旧人類は我々新人類の進化の枷となる存在。劣等の血筋の完全排除を。全ては我々の栄光の為に。

というのが彼等の主張だ。
言うまでもなく、僕は無個性だった。周りの子らと違い襲われる危険があった為外出は許されず、唯々日々増え続ける犠牲者に怯え続けていた。僕が無個性であることを自分のせいだと思っていたお母さん。漸く落ち着いてきたと思ったら事件のせいで自責の念に更に拍車が掛かり、あの申し訳なさそうな視線はかなり堪えた。

「それが、どうしたの……?」

当時、この事件がそれほど報道されなかったのは、もう一つの事件があったからというものだけではなく、───これはもう唯の僕の言い掛かりになるのかもしれないけれど、個性を持っている人達にとっは何の危険もない、些細な事件であったからだと僕は思っていた。人口の8割が個性を持つのと時代。個性を持っていない人に一生の内に何人出会うかなんて極々小さな確率だ。また無個性であるということは必然的に周りと劣っているということになり、蔑まされる。平等なんて言葉は理想主義の上辺だけ。無個性だけが狙われるという事は個性があれば身の安全は確保されるという事。だつて、考えてみて欲しい、強くて派手な、将来確実にヒーローになりうる人間と、唯の無個性の人間。両者共命が危なくて、どちらか一方だけを助ける事が出来るとしたら。選ぶのは、個性持ちであろう。無個性の身を心配するニュースキャスター。個性がある人間は気楽だなと、卑屈になり、またそんな考えをしてしまった自分が嫌いになった。

「魚住さんは無個性じゃないよね」
「うん。正真正銘、個性持ち。発現も皆より少し早めだった」

個性があれば、その事件と関わりは持たないのに、どうして今その話をしているのだろうか。