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episode.8 ページ9

ベリアルは程なくして2人分のマグカップを手にキッチンから現れた。
心なしかマグカップからは甘い匂いが漂っている。


「ベリアルのことだから紅茶かと思った」

「言っただろう?珍しいものだって。チョコレートを飲み物にしたものらしい。冷たいままでも飲めるらしいが今日は雨だ、温めてみたんだが口に合うかい?」


コトリと小さく音を立てて目の前に置かれたマグカップにはココアよりも色の濃い液体が入っている。チョコレートは食べた事はあったが飲み物として飲んだことは無い。Aはこれを初めて目にした。マグカップを両手で包み込むように持ち温度を確かめ、甘い香りを堪能する。向かいの席に座ったベリアルに小さく頂きますと呟くとベリアルは頰杖をつきながら笑みでそれに応えた。


「美味しい」


Aは素直に述べた。
疲労の際は糖分を脳が欲する。過去にルシファーにそう言っていたのを思い出した。さっきまで分厚い書物を読んでいたAの凝り固まった体には、温かさと甘さが染み渡っているように感じた。


「口に合ったようで安心したよ。いつもキミとは紅茶しか飲んでなかっただろ?」


Aの表情をずっと観察していたベリアルは頬杖をついたまま、笑みを絶やさず口を開いた。もう一口とAがマグカップに口を付けたとき、赤い目を細めながらベリアルがポツリと話を切り出した。


「この前A、キミは天司長の役に立ちたいと言った」

「……その話、覚えててくれたのね。忘れてるものだと思ったわ」


ベリアルに話してから久しい話題。

Aは彼が忘れているものだと思っていた。ルシファーに進言するという話も無いものだと勝手に思い込んでいたが、この話を切り出したということは何か進展があったという事なのだろうか。

Aは微かに期待を寄せた。


「実は今朝ルシフェルがファーさんに直談判したのさ。
オレも流石に驚いたよ。最近は討伐ばかりに赴いて他の役割が疎かになってるってね」

「確かに、明らかに以前と比べ物にならない頻度ではあったけど……」


ルシフェル自身の言う通り、ここ最近はルシフェルの姿を見ない日が多くなっていた。
サンダルフォンも憂慮しているのか何処か挙動不審だ。


「そうだろう?オレも力になってやりたいが今は副官を降りてる。
だからその話を聞いた時、Aはどうだい?ってファーさんに言ったんだ」


にやりとベリアルの口角が上がった。

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設定タグ:グラブル , グランブルーファンタジー , ルシファー   
作品ジャンル:アニメ
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます!続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました! (2020年1月28日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました!ファーさん大好きなので嬉しいです!ゆっくりでいいので続き待ってます〜! (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います!読んで下さり有難うございます! (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです! (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね! (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花房 | 作成日時:2019年4月18日 11時

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