episode.6 ページ7
掌で光を受け美しく輝きを放つ指輪。
ルシファーはそれを徐ろにAの前に差し出した。
｢綺麗……｣
指輪を見たAは殺気など何処へやら、歩みを止め、呆気にとられた声で掌に乗った指輪を褒める事しか出来なかった。
｢何を惚けている。早く受け取れ｣
少し苛立った様にルシファーは立ち止まったAを顔だけで振り返る。
｢えっと……、ルシファーこの指輪は一体……｣
戸惑うAにルシファーは面倒だとでも言いたげに惜しみなくその美貌を歪ませた。
｢いつからそんなに察しが悪くなった。
これは……そうだな、護石のようなものだ。お前の身を護る物だと理解すればそれで良い。不要とは言わせん。お前の身体には機密が多い。
"万が一"が無いとも限らん｣
こう捲し立てられては、Aは素直に納得するしかなかった。
確かにこの身にはルシファーしか知り得ない膨大な量の情報が詰まっている。
ルシファーの言う"万が一"の場合、この身体に何かがあっては彼に徒労を強いるだけになる。
成程、とAがルシファーの掌に乗せられたそれに手を伸ばすより先に、痺れを切らしたルシファーがAの手首をひったくるように掴んで引き寄せた。
乱暴な手つきでAの中指に指輪を嵌めようとするが、第一関節を少し過ぎた所で指輪は止まってしまった。
Aの耳にはルシファーの小さな舌打ちが聞こえた気がしたが、ルシファーは再度その隣の指、薬指に指輪を嵌める。すると指輪はスムーズに第2関節の中間に留まった。
｢ふん、精々肌身離さず身につけておくんだな｣
また不機嫌そうに歪められた眉、捨て台詞のように吐き捨てられた言葉。
翻る純白のローブと薬指に収まった指輪を交互に見て、Aは首を傾げることしか出来なかった。
不意に廻廊から見える空に気付けば、空は夕日に赤くAのベールを黄昏色に染め上げていた。
一瞬、その眩しい赤にベール越しに目を細めたAだったが、足早に随分先へ行ってしまったルシファーを追いかけた。
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます！続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました！ (2020年1月28日 0時) (
レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました！ファーさん大好きなので嬉しいです！ゆっくりでいいので続き待ってます〜！ (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います！読んで下さり有難うございます！ (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね！ (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花房 | 作成日時：2019年4月18日 11時
