episode.21 ページ22
「こんな量を一気に処理しようなんて生真面目ちゃん過ぎやしないかA」
Aに与えられた執務室に到着するや否やベリアルは開口一番、やれやれと呆れたようにそう言った。
「仕方ないじゃない、他の天司は扱えない書類もあるのよ。ベリアルだってルシファー関連の物全部引き受けてるでしょう?」
Aは苦い顔をするとベリアルから視線を逸らす。ここまで書類や資料が山積みになっている事で、要領の悪い奴だと誤解されるのを無意識に恐れていた。
そんな事をベリアルが思う筈もないと分かっているのだが、今は気分が滅入ってしまっている所為で正体不明の不安が胸の辺りを圧迫しているように感じた。
「まぁオレはファーさんのしか扱わないから寧ろ楽させて貰ってる様なもんだが……オーケイ、その皺寄せがキミに行ってるみたいだし手伝うよ」
「大丈夫よ、私の仕事だもの」
「こういう時は大人しく任せて置いた方が可愛げがあるぜ?まぁ、借りは少しばかり高くつくかも知れないが」
こうなったらベリアルは引かない。何だかんだ言って結局は面倒見がいい天司だ。Aは説得を諦めて一言お礼を告げると自分の処理するべき書類に目を通した。
ベリアルもデスクの前に置かれた応接用のソファーに腰を下ろし、ガラス製のローテーブルに適当に手に取った書類を無造作に置き1枚ずつ目を通す。そして慣れた手つきで素早くペンを走らせてゆく。
暫く無言で書類を片していたが、徐ろにベリアルが口を開いた。
「それで?A、一体何を負担に感じてるんだ?そういうの隠してるつもりかもしれないがオレは気付くぜ。まぁ、孵った時から知ってる仲だ」
スレートだが態とらしくないベリアルの問い掛けは、Aの口を素直に割らせた。
「案外貴方が一番他人を良く見てるわよね……そうね、なんと言うか、周りが変化して行く事に疲れてるのかも」
「周りの変化?」
「今まで円滑に、歯車が噛み合っていたものが徐々に軋轢を生んで、いくら修復してももう自分では直せない。今そんな感じよ」
「なるほど。君自身は必死に軌道修正役を演じてる訳だ。周りはそんな事気付かずにどんどん歪になっていく……A、キミ研究所の誰かと何かあったのかい?」
この天司は理解が恐ろしく早い。
的を射すぎたベリアルに腹の底が一瞬冷えた気がした。
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます!続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました! (2020年1月28日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました!ファーさん大好きなので嬉しいです!ゆっくりでいいので続き待ってます〜! (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います!読んで下さり有難うございます! (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです! (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね! (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花房 | 作成日時:2019年4月18日 11時