episode.20 ページ21
サンダルフォンが駆け出して行ってしまった跡を
Aは追う事は出来なかった。
今こちらが感情的になって語りかけたとしてどの言葉も彼には届かない気がしたからだ。
Aは当初の目的であったベリアルの元へ向かうことにした。
正直、ルシファーとルシフェルが一緒に新区画に向かっってくれたのは今の心境的にはとても有り難い事だった。一方的に盗み聞きしてしまったとはいえ、どんな顔をして良いかAには分からなかった。
「当分、サンダルフォンの珈琲もお預けかなぁ」
サンダルフォンに一時の感情に任せて出た言葉だとしても、拒絶の言葉を掛けられてしまった。仕事が落ち着いたらみんなで御茶会をしたい。そう考えていたAにとって、少なからず精神的なダメージを受ける結果になってしまった。
「あれ？Aは珈琲をご所望だったかな？」
感傷に浸りつつあったAの背後から官能的な香りが漂い鼻腔を擽る。振り向くとベリアルがいつも通りの妖しい笑みを浮かべながら立っていた。
「(あぁ、何か安心する……)」
いつも通りのベリアルを見て、Aは妙に安心感を覚えた。疲労が限界を迎えていることも、先程のサンダルフォンに関すること、ルシファーとルシフェルの件も、知らず知らずの内に神経を擦り減らしていた。
「おいおい、顔色が優れないな大丈夫か？」
「ちょっと休めてなくて。でも何だかベリアルの顔見たら安心したわ。はいこれ資料よ。ルシファーに渡してね、あとこっちはベリアルの。ミカエルからの報告書と研究依頼の詳細。これ元にスケジュールある程度管理してくれると助かるかな」
「はははっ！何だそれ、そんな事言うのAくらいだろ。それにしても少し休んで行った方がいい。何か溜め込んでるんだろ？その様子だと」
「んー……図星だけど気持ちだけ受け取っておくわ」
正直この胸の内を少しでも吐露したかったが、細々仕事が山積みになっている。ベリアルにはまだ御礼も出来ていなかった為、ゆっくり話せる機会を探していたものの、今ではない事は確かだった。
「ふーん？じゃあキミの執務室にお邪魔しよう。それなら問題ないだろう？」
資料を置いてくるからそこで待っててくれ。そう言い残してベリアルは研究室のドアを開け中に入っていった。
本当は、自分の仕事疎かにしていいの？なんて言葉が喉から出かかった。しかしAにとってそんな言葉を飲み込んでしまう程、胸が高鳴ったのもまた事実だった。
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます！続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました！ (2020年1月28日 0時) (
レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました！ファーさん大好きなので嬉しいです！ゆっくりでいいので続き待ってます〜！ (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います！読んで下さり有難うございます！ (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね！ (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花房 | 作成日時：2019年4月18日 11時
