episode.19 ページ20
尚も創造主から紡がれる言葉は、目の前の彼に聞こえているのだろうか。
すでにAの口元を覆っていた掌は力なく解かれ、
瞳孔が開き、溢れた息が震えている。
言葉というものはどうしてこうも時に鋭利に牙を剥くのか。
未だに続く会話をAはさらに盗み聞く。
「……起き、稼働不能な状態に陥るなどすると奴が覚醒して一時的な代役を務める。お前が回復するまでのつなぎ要員だな」
「一時的な代役……？」
確かに歴とした役割だ。確実なまでに、抜かりない程に隙を作らない考えられた役割。しかし、一定条件の下でしか発動しない。そしてその一定条件が現実味を帯びない仮定でしかない。
「……問題など起きようもない至高の存在だ。サンダルフォンはなんの役にも立たん」
ルシファーの知識と技術の体現。文字通り至高の存在。
Aは目を伏せた。否定の言葉が見つからない。それは造られてから今まで共にいる中ではっきりと自覚しているからだ。自らが羨望する程の存在であるのが、その証拠とも言えよう。
「あの不用品は適当な時期に破棄する。お前の愛玩用として飼ってもいいがな？」
ルシフェルでさえ、言葉を詰まらせたのがわかった。Aも目を見開き会話する2人から視線が外せずにいる。
この話題はこれで終わりだと言わんばかりに、ルシファーは研究の話題に切り替えルシフェルと連れ立って近頃増設された新区画へと姿を消した。
遠ざかる2人の足音を聞きながらAは、目の前で自らの手を血が滲む程握りしめ震えるサンダルフォンに視線を移す。
「嘘だ……じゃあ俺の存在意義は一体……！」
「サンダルフォン今のは「五月蝿いっ！貴女に俺のっ」」
何がわかる
か細い声で弱々しく絞り出た言葉は確かにAを拒絶した。
きつく閉じられた瞳、眉間に寄せられた皺が彼の複雑な感情を如実に現している。怒り、絶望、悔しさ。その一切を振り払うかの様にサンダルフォンは新区画と逆方向に駆け出してしまった。
彼を引き止める為に伸ばしたAの右手は空を彷徨い、そして静かに降ろされた。
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます！続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました！ (2020年1月28日 0時) (
レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました！ファーさん大好きなので嬉しいです！ゆっくりでいいので続き待ってます〜！ (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います！読んで下さり有難うございます！ (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね！ (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花房 | 作成日時：2019年4月18日 11時
