episode.16 ページ17
｢ファーさん、本当にAを研究所から出して良かった訳？｣
薄明かりの灯るルシファーの研究室。
そこには姿勢を崩し何やら小難しい資料に目を通しているルシファーと机に腰掛けながら話すベリアルが居た。
｢問題ない、俺が許可した事だ。支障が出るどころか効率が良くなった｣
｢まぁそうだけど、計画のことルシフェルはとっくに勘づいてるぜ？｣
｢何れ全て露呈する事だ。計画通りに進めているだけなのだからな。結末は変わらん｣
ルシファーは読み終えた資料を束ねながら淡々と応える。表情からは感情は読み取れない。
｢ファーさん自信満々でかわいー。……はー、それにしても寂しいねェ。ファーさんとどれだけ離れ離れにならないといけないんだか｣
寂しい、その感情は本心であるものの、あくまで冗談めかして言うベリアル。しかし、その視線はルシファーの様子を注意深く伺っている。
ルシファーにとってはただの道具、主従関係に過ぎない。己の崇拝的な愛は一方的な片想いと知っていても、反応が気にならない訳ではなかった。
｢お前にとっては瞬く間でしかないだろう。その間に必ず任務を遂行しろ。お前にはAを任せる。奴に奪われるなよ｣
｢勿論、分かってるよファーさん｣
｢(なーんだ)｣
ベリアルはルシファーの言葉に目を伏せた。
最初から自分の事なんてなんとも思っちゃいない。やっぱりAという存在には勝てない。そんな思いがふつふつと湧き上がる。
悶々と気持ちのやり場を探すベリアルを他所にルシファーは資料を片手に席を立つ。
｢(部屋に戻っちまうのね)｣
ベリアルがルシファーの少し猫背気味な背中を凝視しながら落胆しているとルシファーは立ち止まってベリアルを振り返った。
互いの視線が交わる。
ベリアルの身体は金縛りにでもあったかのように身動きがとれなかった。
不意にルシファーがベリアルに妖しく笑いかけた。そして薄い唇から言葉を紡ぐ。
｢俺と世界の崩壊を見たいのだろう？這い蹲ってでも尽くしてみせろ、ベリアル｣
仄暗い灯りの中、まるで幻想のように闇に消え入りそうな儚さが余計に妖しく、ベリアルからしてみればその姿はまさに背徳の権化。己を支配する圧倒的な悪の姿そのもの。
その姿と、たったの一言、それだけでベリアルを昂らせるには十分だった。
｢(終焉を前に、A、キミはどんな顔をする？)｣
終焉が待ち切れない。ルシファーの去った研究室でベリアルは一人無邪気に笑った。
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます！続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました！ (2020年1月28日 0時) (
レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました！ファーさん大好きなので嬉しいです！ゆっくりでいいので続き待ってます〜！ (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います！読んで下さり有難うございます！ (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね！ (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花房 | 作成日時：2019年4月18日 11時
