episode.12 ページ13
討伐に向かうにあたり、ルシフェルとAは軽い打合せを研究所で済ませ現在はアウギュステに訪れていた。
美しく煌めく青い海は、星の民の研究所から出たことの無いAにとって初めて目にする景色だった。
｢これが海なのね……！透き通っていて空と海が何処までも果てなく続いて見えるわ｣
｢いつかこの景色を君に見せたいと考えていた。
気に入っただろうか｣
｢勿論よ！書物でしか読んだことがなかった景色が今目の前にあるんだもの。海というものは空気の匂いも違うものなのね｣
すんと鼻で空気を吸い込んだAをルシフェルは穏やかにそれを見つめる。
ここへ来た理由が手を染めた同胞の討伐でなければと些か思うところもあるが、こんな非常時でなければ彼女が研究所から出る機会もない。
若干不謹慎だと感じながらも、Aをアウギュステに連れ出せたことはルシフェルにとって幸運だった。
しかしそれも天司長である彼にとって
小閑の思考に過ぎない。
｢折角、君を研究所の外へ連れ出すことが出来たのだからもう少しこの景色を堪能して欲しかったが……そろそろ警戒を強化しなければ｣
｢そうね。既に複数の反応を感知しているし、とりあえずこのアウギュステを拠点に近隣の島々も警戒しましょう｣
星晶獣最上位と言っても過言ではないルシフェルとA。感知能力は他の星晶獣より優れているのは明瞭だった。それ故に自分より下位の天司の気配を捉えることは造作もない。2人は既に複数の気配を捕らえていた。
｢撃破出来る戦況であるなら、遭遇時に戦闘しても構わない。しかし余りにも手に余る際には状況を把握した上で私に知らせて欲しい｣
｢了解。ねぇ、ルシフェル｣
Aはルシフェルを呼び止め、彼の手をとり、しっかりと彼を見据えた。ルシフェルは突然の事にスカイブルーの美しい瞳を大きく見開いた。
｢私は貴方に力は及ばないのは分かってる。でも独りじゃ無いのよ。貴方は確かに強くて役割の通り天司達の長。皆、多くを貴方に頼りがちだわ。でもね今回の件で私を頼ってくれたように、もっと貴方の抱える負担を私やサンダルフォンにも背負わせて頂戴？｣
そういって満面の笑みを浮かべたA。
驚きに満ちた表情のルシフェルだったが、ふと長い睫毛を伏せ呟いた。
｢A、感謝する。｣
もう慣れたはずのアウギュステの景色。しかし、彼にとってこの日の景色は最も鮮やかに、美しく、鮮明に焼き付いて離れることはなかった。
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花房(プロフ) - かえでさん» ありがとうございます！続きを現在制作途中なので、コメント頂けてとても励みになりました！ (2020年1月28日 0時) (
レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
かえで - 面白すぎて一気読みしてしまいました！ファーさん大好きなので嬉しいです！ゆっくりでいいので続き待ってます〜！ (2020年1月26日 16時) (レス) id: 07d90d10b2 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - うささん» 私も勝手ながらうささんにこの小説に巡り合って頂けたこと嬉しく思います！読んで下さり有難うございます！ (2019年7月6日 3時) (レス) id: 11b4cc7523 (このIDを非表示/違反報告)
うさ - ルシファー立ちが大好きなので巡り会えたのがとても嬉しいです！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: ef6ea16959 (このIDを非表示/違反報告)
花房(プロフ) - 堕天司さん» ありがとうございます。時間はかかりますが完結目指て続けていこうと考えています。落ちに着いては私自身まだ熟考中ですので、ご意見の1つとしてご参考にさせて頂きますね！ (2019年6月22日 0時) (レス) id: fdefab8ffa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花房 | 作成日時：2019年4月18日 11時
