#16 翔 ｢胸の痛みをすり替える」 ページ44
翔side
あれから１ヵ月…
潤には､なんの変化もみられない。
屈託のない笑顔を俺に向ける。
潤はゆりを疑ってもない。
知らないってのは最強だ。
こっちは拍子抜けしてムカッとくる。
ゆりが､うまいこと隠したってわけだ。
俺とのことは…
なかったことにするつもりらしい。
だけど､潤みたいに細かい男をゆりはどうやってごまかしたんだろう。
無理に開かれた体には必ず跡がつく。
内出血が…ざっと考えただけでも５〜６個はあったはず。
潤が見れば大事なゆりちゃんが何をされたか…
どこをどんな風にされたか…
一目瞭然だったはずなのに。
潤が気づかないほど､ゆりがすぐに立ち直ったとは驚きだ。
相当大きな精神的ダメージを受けてるように見えたけど…
・
…あのあと…俺が抱えあげて立たせてやろうとしても…
ゆりの足はぐにゃぐにゃして全く立たなかったのに。
なのにもうケロッとして潤に抱かれてるってどうなの？
たぶんゆりは､帰国後すぐには潤に会わなかったんだろう。
ちゃんと体の回復を待って会った。
で､潤をまんまと欺いた。
神経質な潤をごまかせるぐらい､ゆりにとってはたいしたことない出来事だったってことだ。
潤もちょろいけど…
ゆりの記憶に残れない俺が一番ちょろいってことだよな。
・
なぁ…ゆり…
そういうことだろ？
・
それとも…
潤のために…
何事もなかったように過ごしてるとか？
ひとりで抱え込んで。
そっちか
そんなにも潤が好きなのか？
どこが好きなんだ？
あのきれいな顔か？
からだか？
理屈っぽいのがいいのか
まじめだから好きなのか
優しいから？
だけど扱いは乱暴だろ？
あいつはどんなふうにおまえを抱くんだ？
あの不器用なやつが案外超絶なテクを持ってたりするのか？
俺は負けてるとは思わない。
てかあいつにだけは絶対に負けない。
・
ゆり…
俺とのことを､なかったことにしようなんて…
そんなこと許さないよ。
あの日の出来事は夢じゃない。
俺のものになんないなら…
潤とだっていさせない…
・
なぁ､ゆり…
・
いまどこにいる？
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作者名：花 | 作成日時：2020年1月7日 19時
