・ ページ36
・
左の内股に内出血みたいなあとがあった。
ほとんど消えかけたそれは…親指の形に見えなくもない。
ためしに右手の親指を当ててみたら…
太ももを下からすくい上げて掴む角度にピッタリはまった。
一瞬…
荒々しい気持ちになりかけて…
俺は､ふ…と笑った。
ありえない
ばかばかしい
・
後ろから中に入るといつものゆりだった。
温かくて狭くて…奥へ奥へと俺を吸い込む…
きれいな背中…
肩甲骨がくっきり浮き出している…
やわらかい髪が俺のリズムで揺れる。
手を伸ばして髪を束ねてそっと引っぱった。
ゆりの上半身がだんだん起きてくる…
あ…
俺は目を凝らしてゆりの耳を見た。
耳たぶの裏に薄いピンクのあざがある。
触ってみると平らで…
それはまるで…
誰かがわざとつけたマークに見えた。
なんか無性にムカついた。
さっきの荒々しい気持ちが戻ってきて…
俺は乱暴にゆりから引き抜いた。
そして電気をつけた。
ゆりを背中から抱きかかえて耳をひっぱる。
あれ？勘違いか…
薄暗い中では怪しく見えたけど…
明るいところで見ると､なんてことない､よくあるただの赤み。
ゆりは文句も言わず俺の腕の中でぐったりしている。
顔を覗き込むと…
泣いていた。
びっくりして胸がギュッとなった。
『ごめん…ゆり…』
「………」
『乱暴にして…ごめん…』
「……ぅぅん」
『泣かないで…』
「…うん…」
かわいそうに､からだが熱い…
まだ熱がある…
『…もう寝よっか…』
「…うん」
『………』
「………」
俺はゆりを胸の中に大切に抱きしめて目を閉じた。
熱くてすべすべした肌がからだに吸い付いてくる…
首筋に唇を押し当てると､せつなくて…
せつなくて…
『ゆり…』
「……ん」
『ごめん…やっぱ…ちょっとだけ…』
「………」
『…優しくするから…すぐ終わるから…』
・
・
ゆりはうつぶせのまま終わるまでじっとしていた。
怖くて確認できなかったけど…
たぶん泣いていたと思う。
俺は自分という人間がつくづくイヤになった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花 | 作成日時：2020年1月7日 19時
