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千咲子side
冬の朝は部屋の中がうっすら白くみえる。
ブルーグレーの毛布から覗く髪…
そぉっと毛布をめくったら､智くんは枕の横に手を投げ出して子供みたいに眠っていた。
無造作に乱れた髪のせいで幼く見える。
額に触れるとかなり熱くて…
高熱でまつげが細かく震えてる。
首の動脈はドクンドクンと脈打って…
少し開いた唇は乾いてささくれていた。
放り出した手を毛布の中に入れようと､そっと握ると燃えるように熱かった。
爪があいかわらず長い…
ときどきこの爪が当たって痛いということを体の中心が思い出す。
突然狂おしいほどの愛おしさが湧き上がり胸が苦しくなった。
抱きしめたくなる気持ちを抑えて､私は智くんから目をそらした。
・
マネージャーが届けてくれた薬袋の中身を確認する。
抗生物質､解熱鎮痛剤､咳止めのシロップ…ビタミン剤､整腸剤…
『…千咲子先生…』
振り向くと智くんが毛布の中からこっちを見ていた。
「わぁ…ひどい声…しんどいね…」
『うん…しんどい…』
「おかゆ作るね…」
『うん』
「おかゆ食べてお薬飲んで…いっぱい寝なきゃね…」
『はい』
「素直で､とってもお利口さんですね(笑)」
『はい。先生…お注射して治してくらさい』
私はふふっと笑ってキッチンに立った。
寝室から智くんの咳が聞こえる…
・
炊き上がった卵のおかゆを器に移して刻んだ三つ葉を散らした。
器は､ぽってりと丸い織部黒…
朱塗りのスプーン､おだしの香り､湯気…
それから冬の白…
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作者名：花 | 作成日時：2020年1月7日 19時
