優雅な怒り【THE WRAITH】 ページ16
血に濡れる。……涙に濡れる。異世界とは思わぬ程の、綺麗な満月。よく見れば、まだ平和だったあの頃の情景が見えて来る。それさえも、もはや"過去"。
あぁ、彼女の平和な時代は何千年前の話なのだろう。
Aは立ち止まり、昔を思い出す。別に何千年前なんて程時は経っていない、『あの世界では』。
「やっと見つけた」
後ろから鐘の音がしたと思えば、Aの肩をがっしりと掴む殺人鬼、レイスの姿があった。満月に照らされるAを見つけたのだ。
「今日は、逃げないんだね。なにか嫌なことでもあったのかい？」
Aの血に濡れた両肩に大きなレイスが乗る。かつての生贄仲間達の血が、生きている生贄に漏れる。じんわりと、大胆に。
レイスはアザロフを持ち、Aの顔がこちらから見えた瞬間に、半殺しにしてフックに吊ることにした。別にAにはなんの感情もない、ただの生贄。上司の食用。それも彼女はお気に入り。これは良いチャンスだ。
『貴方には、"慈悲"がないのね』
Aがレイスに顔を向ける。
___アザロフの真っ黒な目がAをのぞく。レイスはアザロフを振りかぶり、Aに重く触れようとするも、レイスの手は動かなかった。動けなかったのだ。
_______なんだ、その顔は。
「……僕、君のそういう顔が嫌だよ。その、"私はお前に屈しない"っていう、自信満々な顔？ っていうのかな……。思い出すんだよ、君みたいなお調子者に似てる、クソ上司を」
アザロフが風で喚く。
Aはブラウンの瞳をアザロフに向け、微笑みながら話し出す。
『認めなさい、貴方は
怒りなんかじゃない。憎いんじゃない。
何故か、生贄が、人間が、彼女が、Aが、とても美しく見えた。神だ。女神のようにみえた。
レイスはアザロフをおとす。
カランと音がして、アザロフは嘆いたように感じる。
「A。生贄なのに綺麗な女の子。僕を、頼むからぼくを混乱させないで」
マスク越しで流れる透き通った涙。決して綺麗とは言えないけれど、それさえも儚い。
Aはいなかった。
オートヘイブンレッカーズの満月は、レイスを照らし出してはくれない。
頭上からカサカサと音がする。
黒い触覚のようななにかがレイスの顔を傷つける。
"無慈悲な生贄だ。君はなんて優しいんだ"
怒りに侵食された声が聞こえた。
［優雅な怒り］ED
深淵から挨拶【THE PIG】→←愛故に【THE ENTHITHI】
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金魚きんぎょ(プロフ) - この作品好きです！リクエストなんですけれど、トリックスターとのお話いいでしょうか？ (2021年9月5日 14時) (
レス) id: fd80c7906a (このIDを非表示/違反報告)
金子氏(プロフ) - エニグマさん» こちらこそありがとうございました！細かいところに気を遣ったところもしっかり分かってくださって嬉しいです！ (2021年5月6日 7時) (レス) id: 5f47d57489 (このIDを非表示/違反報告)
金子氏(プロフ) - Nightさん» リクエストありがとうございます。リクエスト了解です！時間がかかるかもしれませんが、お待ち頂けると嬉しいです…！ (2021年5月6日 7時) (レス) id: 5f47d57489 (このIDを非表示/違反報告)
Night(プロフ) - えっと、追加で、、前回と同じ夢主でも大丈夫でしょうか？ (2021年5月6日 1時) (レス) id: f0b6c8446e (このIDを非表示/違反報告)
Night(プロフ) - 夜分にすいません。リクエストで、デススリと飲み比べしてるお話良いでしょうか？夢主はサバでお願いします！ (2021年5月6日 1時) (レス) id: f0b6c8446e (このIDを非表示/違反報告)
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