あの夏の花火 (ページ2)

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２恋に落ちた瞬間ページ2

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彼を初めて見たのは、高校に入って一番最初のイベント、体育祭での仮装パレードだった。

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この地方で一番の進学校であるうちの高校は、受験の負担にならないようにと、いつの頃からか毎年五月に体育祭を行う。

そのプログラムの中の仮装パレードは、クラスごとにテーマを決めて、それぞれ工夫を凝らして衣装を作る。

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埃っぽい土煙の中、隣の２組が近づいて来た時、ひときわ高い女子の歓声が上がった。

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グランドを歩いて来る一行に目をやると、先頭に、マリオらしいオーバーオールを着た男子。

その後ろに、名前も知らない、でも何となく見たことのあるキャラクター達になりきった男子達が、ジャンプしたり、ピースしたりしながら歩いて来る。

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その中に。

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一人、痩せた、背の高いピーチ姫が、黄色いビニール紐で作ったらしいカツラをかぶり、ピンクのマキシワンピを着て歩いてくるのが目に飛び込んで来た。

女子達の、悲鳴とも歓声ともとれる高い声は、ピーチ姫に向けられたもの。

照れくさそうに歩く、ピーチ姫。

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うちのクラスの前に来た時、男子の一人が、ピーチ姫に呼びかける。

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「雅紀ーーーーー！」

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彼はこっちを見て、キョロキョロと声の主を探す。

視線を止めると、ニコッと笑って、ブンブンと大きく手を振った。

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…これが、あの夏の、恋の始まり。