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それから、数日後。九月も終わる頃。俺は、ようやくAさんと顔を合わせた。
返事は、俺が予期していた通りのものだった。
「……やっぱり。なんとなくわかってました。」
「……すまん。」
「どうしてAさんが謝るんですか。告白したのは俺の方なんですから……気にしていませんよ、今更。……それよりも、Aさんが幸せになれるなら、それでいいです。」
「恋人」になれないなら、せめて「弟」として。Aさんの幸せを、願いたい。
「Aさん。ひとつだけ、お願いしてもいいですか。」
「何だ?」
「俺には、どうか今まで通り接してください。まだ、あなたとは仲良くしていたいんです。」
「……そんなことか。わかった。私も、まだお前と縁は切りたくないよ。」
Aさんはそう、ふっと笑った。
この笑みに、何度心を高めたものか。
「……それじゃあ。」
「ああ。またな……若。」
Aさんはそう言って、家を出ていった。
俺は彼女が出ていった後。こっそり、家の外へ出て彼女の背中を見送った。
遠くなって、見えなくなるまで、ずっと。俺はそこに立って、Aさんを追い続けていた。
もう、どこにもやれない自分の想いと一緒に、静かに。
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幻想曲(プロフ) - 柏餅さん» ありがとうございます!桜、朱に咲くから閲覧ありがとうございました! (2016年2月27日 22時) (レス) id: 1deaa07922 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅 - お疲れさまでした!!おもしろかったです(*´∀`) (2016年2月27日 16時) (レス) id: c42c8704be (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - 柏餅さん» 返信遅くなってすみません!ありがとうございます、頑張ります! (2015年12月29日 7時) (レス) id: 1deaa07922 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅 - 番外編頑張ってくださいね♪ (2015年12月28日 9時) (レス) id: c42c8704be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幻想曲 | 作者ホームページ:http://uranai.amanoboru
作成日時:2015年12月27日 21時