ーEpisodeー ページ4
*
教室に着くと、既に由実が来ていた。
＿嘘、由実がもう来てる。＿
いつも遅刻寸前に登校する由実が、
自分より先に来ているという事実に、
軽くショックを感じながら、
遙はとびっきりの笑顔で声を掛けた。
「おっはよ〜！ 由実、今日“は”早いね！」
“は”を強調してそう言う。
半分嫌味をこめた言葉に、由実は嫌な顔をする。
「今日はって……まぁ、おはよ。」
「傘は靴箱のとこ置いてるから。」
「お、ありがと……？」
ありがとうというのは自分では無いと、
言ってから気が付く由実。
そんなことは知る由も無く、
「今日は晴れたね〜」
「アンタ、本当にマイペースよね。」
「マイペースって＿」
親友に呆れられてしまった遙は、
言い返してやろうと口を開いた。その時。
「ほら、席座れよ〜」
先生がやって来たのだ。
少し眉を下げ、仕方なく席に着く。
とは言っても、一つ席を挟んだだけ。
言い合いならいくらでも出来る。
「休み時間、覚悟しときなさいよ。」
小さな声でそう言った。
聞こえないフリでもしているのか、
返事は返って来なかった。
部活帰り。由実とは途中で別れ、
一人で鼻歌を歌いながら歩いていた。
＿あ、昨日の路地裏。＿
雪に会えるかな、という期待を胸に、
いつもの道を右に曲がったのたが＿
「ま、いないか。」
分かってはいたものの、少し残念だ。
急いでいる訳では無いので、路地裏は通らず、
中断していた鼻歌を歌いながら
家へと帰っていくのであった。
それから、雨が降る度にあの路地裏を通った。
その度に雪はちょこんと座っていた。
ただ、晴れの日には座っておらず、
数週間後、遙にとって、
雨は晴れより好きな天気になっていた。
＿雨が降れば、雪に会える。＿
雨が降っているのが見えると、
自然と口角が上がってくるようになり、
自然と足取りが軽くなってくる。
勿論、由実は頭の中に「？」が浮かんでいた。
しかし、深く言及しようとはしないらしく、
疑問はいつの間にか消えていった。
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