love u…【短編集】

. ページ47

.







上手く笑えていただろうか、樹の言う「また」はもうニ度と来ないのに。









『バイバイ、元気でね、じゅり』








自分の家に帰って行く樹の背中を見つめながら、おれはそう呟いた。






.
.




8年後、26歳になったおれは建築デザイナーとして働いている。



元々絵を描くのが好きだったおれにとって、この職は天職だ。



転校した後、たくさんの不在着信が来ていたが、全部無視して全員の連絡先を消した。







……樹を除いては。








樹のことを忘れることなど出来ず、"田中樹"のトーク画面は友だち欄の1番下でまだひっそりと表示されている。



あいつから電話が来ていたのは一度だけだったし、きっともうおれの事なんか忘れて幸せになってるのだろう。




でもやっぱり、おれは樹のことを忘れられなかった。




何度か恋人ができた時も樹のことがが頭に浮かんですぐに別れてしまった。




きっとこのまま一生独身なんだろうな、と情けない自分に思わず同情してしまう。





.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す