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緊急停止 ページ41

「僕ね、好きな人の足を引っ張りたくないンダ」


私達の正面の座席に立ち、ンアちゃんが決意を帯びた声で告げた。ンアちゃんが、優しく微笑んだのがわかる。



「僕、マツリくん推しだし、マイちゃん推しでもあるカラ!」

「ンアちゃん……」


何かこみ上げてくる物を感じてマツリを見ると、彼は泣きそうになっていた。それを誤魔化すように、「円果推しじゃなかったのか」と苦笑する。


「エー、ソレとコレは別ダヨ!ミンナ、ミンナ、大好きナンダ!」

「調子のいいヤツだな」




「私も、ンアちゃんの事大好きだよ」

「あぁ、俺も…ミーハーの事、好きだよ」

「ホント!?エヘヘ〜」


照れたようにンアちゃんが笑う。彼のことは絶対に忘れない…そう、確信できる。
声が大きいところも、真っ直ぐなところも、全部ンアちゃんのいいところだ。それも全部、忘れない。


再びあたたかい雰囲気が私達を纏い、そろそろマツリが羞恥を感じてきた、その時だった(あのマツリがそんなに素直に「好き」とか言うの珍しいからね)。
 


 
 

キキキィー!!!!



「ワア!」

「な、何…!?」


耳を劈くような、大きな金属音が響く。同時に、列車も止まってしまった。エレベーターの時と同じような音に、耳を塞ぐ。



「マイ、ミーハー、怪我はないか?」

「うん、大丈夫。ありがとう」


ンアちゃんも「僕も平気!」と手を上げる。
列車が急に…しかもあんな嫌な音をたてて止まるということは、緊急事態である可能性が高いだろう。何があったのか。




「そうか、よかった。今のは…緊急停止か?」

「ナンダロウ?何かあったのカナ?」

「……調べてみる」




警戒しつつ席から立つマツリに、私も立ち上がろうとする。たぶんこの列車を動かすには謎解きが必要になるだろうから。私だって、いないよりはマシだと思う。
しかし、マツリはそんな私を手で制した。

「大丈夫だ、マイは休んでてくれ。
…それにほら、ミーハーの話し相手になってやってくれないか」



「……うん、わかった」


労るような笑みを私に向けるマツリに、何故か心臓がきゅっと締まる思いがした。今の体の状況もあるし、頼りないのはわかっている。
…それでも、少しだけ寂しいような。

大好きな→←君の夢なら



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如月慧音花(プロフ) - いつもありがとうございます!(*^_^*)もう……書いてる時もしんどくて(でも楽しい)……一応まだ続くんですよ(ボソッ (2021年2月8日 15時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
サーナ(プロフ) - 如月様、お疲れ様です!とうとうエンディングが近くなってきましたね…。どんどん切なくなっていく中、とうとう推しも消えてしまい……正直ボロ泣きしてました(泣)どんな最後になるのか、今からでも楽しみです!これからも頑張ってください!(≧∇≦)b (2021年2月7日 17時) (レス) id: b8fd1604f5 (このIDを非表示/違反報告)
如月慧音花(プロフ) - えっ…?(困惑)ありがとうございます私も好きです(??) (2021年2月7日 8時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
モブサイコ100(プロフ) - アッアッアッ…………泣くって…………泣くしかないって…………ヤダ…好きです(唐突な告白) (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6acf3cee05 (このIDを非表示/違反報告)
如月慧音花(プロフ) - ありがとうございますー!!もうホントサーナさんには感謝しか出ないです…!そうですね(笑)マイちゃん…結構苦労人ですからね、頑張ってほしいです(笑) (2021年1月5日 0時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:如月すや | 作成日時:2021年1月4日 14時

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