“幸せ”って ページ5
「あー……疲れた…」
4時間後。夕方になってやっと客足が途絶えてきた。
飲食店でバイトしたことはあるけどこんなに大変だったことはない。…時間あったら普通に手伝おうかな、食堂。
「イヤー、助かったよユー達!コレ、マイハートダヨ」
ピロリロリン
ミトの前に、1つの光る歯車が出てくる。お給料みたいなものなんだろうけど、当然私の分はない。わかっていたことだけど、何だか疎外感を感じた。
歯車を集めて、腕輪を完成させることがこの世界から脱出する条件だと、ウーユリーフは言っていたのに。
――もし、私だけ帰れなかったら?
「…マイちゃん、僕はトレーラーに戻るけど……マイちゃん…?」
「…あ、ごめん、何?」
…駄目だな、心配させないようにしないと。
取り繕うようにして浮かべた私の笑みを見て、ミトが何かを考えるように少し下を向く。そして、何を思ったのか私の頭を撫で始めた。労るように、そっと。
「…大丈夫だよ、マイちゃん。君は、ちゃんと…“幸せ”になれるから」
「………うん、ありがとう」
ミトは、優しい。
わかってるよ、他意は無いのはわかってるけど……。
………“この世界から帰れる”とは、言ってくれないんだね。
*
ミトと別れて、1人で10階の乙女ゲーム部署へと向かう。何気に、この世界で1人で行動するの久しぶり……というか、初めてかもしれない。
今まで何処かへ行くとなったら、必ずと言っていいほど皆(特にマツリ)が着いてきてくれたから。
エレベーターから降り、フロアを見回す。私をここに呼んだ張本人のノゾミは、どうやら椅子に座ってスマホをいじっているようだ。
「ノゾミー、来たよー……何してるの?」
「あぁ、マイさん、仕事お疲れ様です。デバッグですよ」
「へぇ……面白い?」
「そこそこです」
そこまで言ってから、ノゾミがスマホをデスクに置いた。かと思えば隣に置いてあったもう一台のスマホを手に取る。
「申し訳ないんですが…実は、もう一つデバッグを頼まれていて。手伝ってほしいんですけど、いいですか?」
「ん、いいよ。乙女ゲームだよね?」
「はい」
スマホを受け取り、確認する。正直、デバッグってやってみたかったから大歓迎だ。
ノゾミの隣の席に座り、アプリを起動する。歯車は貰えないけど…こうやって、誰かと作業したりするのは、楽しいからいいかな、なんて。
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如月慧音花(プロフ) - いつもありがとうございます!(*^_^*)もう……書いてる時もしんどくて(でも楽しい)……一応まだ続くんですよ(ボソッ (2021年2月8日 15時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
サーナ(プロフ) - 如月様、お疲れ様です!とうとうエンディングが近くなってきましたね…。どんどん切なくなっていく中、とうとう推しも消えてしまい……正直ボロ泣きしてました(泣)どんな最後になるのか、今からでも楽しみです!これからも頑張ってください!(≧∇≦)b (2021年2月7日 17時) (レス) id: b8fd1604f5 (このIDを非表示/違反報告)
如月慧音花(プロフ) - えっ…?(困惑)ありがとうございます私も好きです(??) (2021年2月7日 8時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
モブサイコ100(プロフ) - アッアッアッ…………泣くって…………泣くしかないって…………ヤダ…好きです(唐突な告白) (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6acf3cee05 (このIDを非表示/違反報告)
如月慧音花(プロフ) - ありがとうございますー!!もうホントサーナさんには感謝しか出ないです…!そうですね(笑)マイちゃん…結構苦労人ですからね、頑張ってほしいです(笑) (2021年1月5日 0時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月すや | 作成日時:2021年1月4日 14時