君の夢なら ページ40
(…さっきの、何だったんだろ)
あの後、マツリの腕輪に歯車を嵌めてみたところ、何も起こらなかった。まぁ、当然と言えば当然だ。『腕輪を完成させる』というのは、ヒロインの持つ宝石が3つ揃って初めて成立するのだから。
そして、ヒロインが送ってきたキリオの設定資料。あれはおそらく彼女なりの“救難信号”だったのだろう。キリオが自身と同じ境遇である事を伝えたかったのだろうか。
…何故、それを伝えたかったのか。
やはりそれは、彼女が私やマツリに助けを求めているからなのではないだろうか。『この境遇から救い出してほしい』と。
「タダイマ」
「ひぇっ」
「ふっ」
いつの間にか隣に座っていたンアちゃん…に驚くマツリに笑ってしまった。さすがに今のは私でも気付いてたよ?マツリって意外と私よりビビりなところあるよね。
「いつもバタバタしてるクセに、急に静かに行動するな」
「エー」
ンアちゃんが残念そうな声を出すのを見て、マツリが「いや、そんな事はどうでもよくて…」と頭を振る。
「訊きたい事がある。お前……ヒロインの…その、吐瀉物だったのか!?」
「ウン。僕、ヒロインのゲロだよ」
「凄いストレートに言ったね…」
マツリでも結構配慮して言ったのに、考えない辺りさすがンアちゃんだ。
そんなにあっさり認めることなのか、とは思った。
そう、さっきもちらっと言ったが、『ウーユリーフの処方箋』の中で、ヒロインがいきなり嘔吐した。その物は、明らかにンアちゃんだったのだ。…よく吐けたね、ヒロイン。
「なんで言わなかったんだ!?」
「大事なコトなの?」
「…そうでもないね」
再び「エー」と呟き、ンアちゃんは足をぶらぶらさせて俯く。
「ネーネー、マツリくん、マイちゃん。
2人は、ズットここに居てくれるワケじゃないの?」
どことなく寂しげな雰囲気を纏うンアちゃんに、「誰から聞いた」とマツリが目を丸くする。
「マツリくん達の会話を聞いてて、そう思ったんダ」
「…あぁ、元の世界に帰りたい」
少しだけ言いにくそうに、マツリが呟いた。私も同調…しようとしたが、出来なかった。元の世界には帰りたい。でも、ンアちゃん達とは離れたくない。
「ドウシテモ帰りたいの?」
「そうだ」
「寂しいケド……それがマツリくんとマイちゃんの夢なら応援するヨ」
そう言って、ンアちゃんは私とマツリの間に座りお互いの手をとる。
しかし、すぐに離してしまった。
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如月慧音花(プロフ) - いつもありがとうございます!(*^_^*)もう……書いてる時もしんどくて(でも楽しい)……一応まだ続くんですよ(ボソッ (2021年2月8日 15時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
サーナ(プロフ) - 如月様、お疲れ様です!とうとうエンディングが近くなってきましたね…。どんどん切なくなっていく中、とうとう推しも消えてしまい……正直ボロ泣きしてました(泣)どんな最後になるのか、今からでも楽しみです!これからも頑張ってください!(≧∇≦)b (2021年2月7日 17時) (レス) id: b8fd1604f5 (このIDを非表示/違反報告)
如月慧音花(プロフ) - えっ…?(困惑)ありがとうございます私も好きです(??) (2021年2月7日 8時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
モブサイコ100(プロフ) - アッアッアッ…………泣くって…………泣くしかないって…………ヤダ…好きです(唐突な告白) (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6acf3cee05 (このIDを非表示/違反報告)
如月慧音花(プロフ) - ありがとうございますー!!もうホントサーナさんには感謝しか出ないです…!そうですね(笑)マイちゃん…結構苦労人ですからね、頑張ってほしいです(笑) (2021年1月5日 0時) (レス) id: e44a9745ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月すや | 作成日時:2021年1月4日 14時