処方箋の裏側で 1-4 【ウーユリーフの処方箋】

誰のせいでもない ページ14

マツリの唐突な行動に、一瞬理解が遅れる。
どうして、何で、と疑問があふれるも、口が動くだけで声にならない。



「マツリ……？」


「…だったら、俺の方が責任は大きい。
あの時、カナタを引き上げられなかったのは俺だし、あの紙を落としたのも俺だ」




“あの紙”というのは、おそらくキリオの設定資料を指すのだろう。
…確かに、あの紙を見てからキリオの様子はおかしくなったといえる。でも…。


「…っ、でも、そもそも私がカナタを引き留められなかったから…！」


絞り出すような声で呟くと、マツリが大きくため息をついたのがわかった。呆れられている。





「…じゃあ、そもそもカナタと“友達”にならなければよかったんじゃないのか？そうしたら、そんなに辛くなんて…」



「…っ、そ、れは…！」


否定しようと顔を上げると、柔らかく笑んでいるマツリと目が合った。そんなこと思っていないんだな、と気付くと同時に、思う。
あ、その顔…凄く、安心する。





「違うよな。俺もそんなこと思ってないよ」

だからそんな泣きそうな顔しないでくれ、と困ったような顔をされる。堪えきれずに零れた涙を、彼の手が優しく拭った。




「…あのな、マイ。誰が悪いとかじゃないんだ。カナタも、1人で行動することのリスクは、わかっていただろうし…まぁ、あえて責任を追求するなら、全員だな」

「…っ」





「だから、もうマイ1人で背負わないでくれ。…な？」



幼い子をあやすような手つきで頭を撫でられる。
抱きしめられているが故に伝わる彼の体温と心音が、凄く、心地よくて。









心の底に残るじくじくとした痛みには、気付かないフリをした。

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