さよならだけが人生だ ページ8
アマイモンside
『ばぁちゃ!』
ズシャッ
だから言わんこっちゃない。
まあ声には出していないんですけどね。
婆「Aちゃん!下駄で走ったら危ないだろう?」
老婆がAの肩を抱く。
いや、正確には抱こうとした。
『…!ばぁちゃん…』
が、その手は虚しく空を切る。もうどうやら人間に干渉する力も残っていないようですね。
婆「あらら、そんな顔しなさんな。可愛い顔が台無しじゃないか。」
老婆の透けた身体越しに見るAは、酷く傷ついたような顔で_どうしてそんなにコロコロ表情が変わるのだろう?なんて関係ない事を僕は思う。
『もうAとは、一緒に居てくれないの?』
婆「死んだ生き物は、ここに居てはいけないんだよ。」
『そんなの関係ない!私、ばぁちゃん無しじゃ、生きていけない!』
婆「Aちゃんなら、大丈夫。」
『大丈夫なんかじゃない!大丈夫じゃないよ!だから__』
婆「大丈夫。大丈夫なんだよ。もう、私が居なくてもアンタは大丈夫。」
まるでそれは、孫娘に言うのではなく自分に言い聞かせるように老婆は言う。
婆「だってこんなに素敵な友人が、Aちゃんには沢山いるじゃないか。」
老婆がそう言うと、庭から数々の悪魔がわっと出てくる。
王の話を盗み聞きするなんて、全く礼儀がなってないですね。
婆「アマイモンちゃんも!Aちゃんをよろしくね。ばぁちゃんからの最後の頼みじゃ。」
くるりと振り返ると、僕の手を取ってAと手を繋がせる老婆。
『待って、待ってよばぁちゃん!私まだ何も!』
Aの唇にそっと指を添える老婆。
婆「Aちゃんは、私に沢山無いものをくれた。Aちゃんの祖母が出来て、私は鼻が高いよ。それじゃ、笑顔で!元気でね!」
そういうと、老婆は月の光の中に霞のように消えていった。
『…ばぁちゃん』
残されたAは、冷たい石畳の上で項垂れながらポツリと小さく呟いたのだった。
____
Aside
昨日の出来事がどうにも信じられなくて、信じたくなくて、でも居間に行っても庭に行っても何処にも祖母の姿は無くて、サヨナラを言うアマイモンにろくな返しも出来ないまま送り出してしまった。
『ばぁちゃん…』
10年一緒に居たんだ。物心ついた時から私を、死んだ母に変わって育ててくれた祖母はもう居ない。
一人ぼっちになってしまった。
そんな私を慰めるように寄ってきた緑男を、眺めていると不意にチャイムが鳴り響いた。
5人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あじさい(プロフ) - いちたさん» わア゙ア゙ア゙ア゙ア゙(இдஇ`。)ありがとうございます!不定期更新ですがよろしくお願いします! (1月18日 23時) (レス) id: 8b17fee896 (このIDを非表示/違反報告)
いちた(プロフ) - 大好きです (1月2日 12時) (レス) @page8 id: 37eb9ff948 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あじさい | 作成日時:2023年6月30日 21時