食欲 ページ7
ドンッ
『すみま…ゲホッゴホッ』
咄嗟にぶつかってしまった事を謝ろうかと思ったが、病弱な体に鞭を打ってここまで走ってきたのが祟ったのだろう。
のどを貫くような痛みが私を襲う。
私はその痛みに耐えられずにその場にうずくまって、咳をしてしまった。
すると咳をした拍子に血を吐いてしまい、それ以上言葉にする事が、出来なくなってしまったのだ
(どうだ?そっちはいたか?…チッ!)
遠くで私を探している声がする。
きっと私はこのまま"大人達"に捕まって、一生あの家から出られなくなるのだろう。
嗚呼…嫌だ…
…嫌だ
…あの人に会えないまま死ぬなんて…
『…いゃだ。』
ゼェゼェと息をしながら、惨めに自分の吐き出した血と涙にまみれていると、不意に私の頭上から声がした。
?「貴様、健康そうには見えないな。症状を見たところ結核かそのあたりの病だろう?」
腹に響く低い声。
?「病は辛い、体も細くて弱そうだ。きっと、産まれた時から、病弱なのだろう。」
まるで、自分は理解者だとでも言いたげな話し方にムカついて、なけなしの力で顔を上げると、紅い瞳と目が合った。
?「そんな哀れな貴様に私が慈悲をかけてやろう。
貴様、鬼にならないか。」
私は目を見開くと、その言葉に小さく首を縦に振った。
どの道私はこのままだと、大人達に連れ戻されるか、ここで野垂れ死にするかの選択しかない。
…魘夢には、絶対に会えないのだ。
他の人から見れば、それは俯いただけに過ぎなかったのかもしれない。
でもこの人には、それが了承の合図だと伝わったみたいだった。
首に彼の爪が突き立てられる。
『あ"っ!がっ?!』
何かが流れ込んでくる。
私の体は、その何かに耐えられないのか、やがてミシミシと体の中で、鳴ってはいけない音がし始めた。
しばらくすると、首から彼の爪が引き抜かれる。
私はその場に先程の様にうずくまると、自分の体を抱きしめた。
そうでもしないと、気が狂ってしまいそうだったから。
『う"ぅ"…ぐぁ"ぁ"…』
口が半開きになって、涎がだらしなく垂れている感覚がする。
お腹が空いた。
腹が空腹で、焼き切れてしまいそうだ。
そうやって、必死に空腹に耐えていると後ろから声がする。
男「!!居たぞ!こっちだ!」
私はゆっくりと、その声のする方へ顔だけ向ける。
美味しそうだなァ…
私が我慢していると思ったのか、赤い瞳の彼は、こんな私の為に許可をくださった。
?「喰ってもいいぞ。」
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あじさい(プロフ) - REDさん» ありがとうございます!そう言っていたたげて嬉しいです!がんばります! (2021年1月4日 15時) (レス) id: 68023a472a (このIDを非表示/違反報告)
RED(プロフ) - 初めましてです。イラスト可愛いですね。これからも頑張って下さい。 (2021年1月3日 19時) (レス) id: 81d97b802d (このIDを非表示/違反報告)
あじさい(プロフ) - pookyさん» コメントありがとうございます!ご期待に添えるように頑張りたいと思います! (2020年12月29日 13時) (レス) id: 68023a472a (このIDを非表示/違反報告)
pooky - 面白いですね!続きが気になります!お体に気を付けてくださいね ! (2020年12月29日 9時) (レス) id: 012e567f90 (このIDを非表示/違反報告)
あじさい(プロフ) - 盃と餅さん» コメントありがとうございます!亀更新ですが、よろしくお願いします! (2020年12月27日 15時) (レス) id: 68023a472a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あじさい | 作成日時:2020年12月26日 2時