02 ページ2
Cafe Western
そう書かれた小さな看板。私は今それを目の前にして右往左往している。はたから見たら物凄く変な奴だろう。
ゆっくり深呼吸をしてドアノブに手をかけ、ギュッと押すと、チリンーーと可愛らしい鈴の音がした。
「いらっしゃいませ」
『あ、あの……』
「お一人様ですか？」
『え？いや、えっと』
「……どうされました？」
『き、今日、ここで面接を受けさせて頂くことになってるんですけど』
「……はい？」
店員さんは笑顔は保ったまま、そんなこと聞いてないみたいなように聞き返された。
え？確かにこの時間にここでってなってたはずなんだけど。
『先週連絡して、今日この場所でって……』
「…失礼ですが、どの店員が対応されたか伺っても？」
『は、はい。えっと、冴島さん「少々お待ちください」
食い気味にそう言うと、エプロンのポケットに入っているスマホを掴んでバックヤードらしき所へ続く扉の中へ消えていった。
若干顔が引きつってたような。
待つこと数分、扉から出てきた店員さんはちょいちょい、と手招きをした。着いていくと小さな部屋に簡素な机や椅子が並んでいて、店員さんの向かいに座るよう促された。
「すみません。店長に確認とれました。代わりに面接を担当します、中間です」
『よ、よろしくお願いします。吉川です』
よかった！面接だ！緊張しながら履歴書を渡す。中間さんは、時折「ほぉ〜…」とか「うんうん」と呟きながら私の履歴書を見る。
「……吉川Aさん」
『は、はい！』
「君、新卒なんや。前の職場は…」
う、突っ込まれるとは思ってたけど、直接言われるとつらい。
『……一身上の都合？みたいな感じで』
「ふぅん。どこでここ知ってくれたん？」
『え！？あ、先週偶然ここに立ち寄って、貼り紙見て』
「そんな簡単に決めたん！？行動力あるなぁ。さすが若者」
『いや、生活がかかって「じゃあその力、存分に発揮してもらうから」……へ？』
「実は形だけの面接やねん、これ。店長がもう採る気満々で。落としたら俺しばかれるわ」
はは、と笑いながら右手を差し出された。
「ようこそ、Cafe Westernへ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 267人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はなこ | 作成日時：2019年5月13日 22時
