【実況】私のスーパーヒーロー【ky】 (ページ5)

今日:19 hit、昨日:2 hit、合計:91,233 hit

003 ページ5

「え～！こんなに沢山のリンゴ、いただいていいんですか？」

「いいのよ～！沢山あって夫婦2人じゃ食べきれないし、ぜひもらって！」

引っ越してきて早３日目。
私の手にあるのはお隣の奥さんに手渡された沢山のリンゴ。

奥さんの妹さんの嫁ぎ先がリンゴ農家らしく、定期的に送ってもらっているらしいが夫婦二人じゃ食べきれないとのことで、それならば断る理由もこちらには何もない。

袋の中に沢山詰まった真っ赤に熟れたリンゴを見て「ジャムにしようかな…アップルパイもいいな」なんて何を作ろうか今からわくわくしてしまう。

「……あ、」

「あ、こんにちは～」

玄関先でそのまま奥さんとの世間話に花を咲かせていると、エレベーターのほうから見知らぬ黒髪の男性が歩いてきた。

その男性と目が合ったのでペコリと挨拶をする。

声をかけられた男性も「ども」と小さく会釈して私達の横を通り過ぎていった。そして立ち止まったのは私の部屋のひとつ向こう側。つまり、私の逆側のお隣さんだ！

ようやく会えた！と思ったときの私は行動が早かった。奥さんに一言断って、自宅玄関のドアを開ける。玄関先に置きっぱなしになっていた引越し挨拶の紙袋をひっつかんで、今まさに家に入ろうとしていた男性に声をかけた。

「あ、あの！こちらのお部屋の方ですか！？」

「…………そうですが」

多少怪訝な様子で男性が振り返る。

「隣に引っ越してきた者です！先日ご挨拶に伺ったんですがお留守だったみたいで…」

「…あ～～！」

これ、よかったらどうぞ。と男性に紙袋を渡す。なんだか「納得した」みたいな表情をしながら、彼もその袋を受け取ってくれた。

「まだ引っ越しの荷物が片付けきれてなくて…家具とかもこれから届くものもあるのでしばらくの間もしかしたらバタバタしてうるさくしてしまうかもしれませんが…」

「あ、全然大丈夫すよ。というか、この部屋そんなに頻繁に人がいるわけじゃないのであまり気にしなくてOKっす」

人がいるわけじゃない…？どういうことだろう？彼の言葉に多少引っかかる部分があったのだが、それでもにこやかに「じゃあまた」と言って彼が玄関に入るのを見送り、私も家の中へと入っていった。

何はともあれ、ようやく無事に上下左右、隣接する部屋全てに挨拶に行けたのでミッションをクリアしたようで私も嬉しくなった。