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今日も、いつもと同じようにコンビニの店先で彼女と立ち話をする。時間にしたら10分ほどだと思うが、俺にとっては大切にしたい時間だった。
「じゃあキヨくん、私そろそろーー
そう言って彼女が帰ろうとしたときだった。
「A？」
彼女の名を呼ぶ男の声に、俺も彼女も顔をあげる。
「……っ」
「なにしてんの」
怒りを顕にしながらこちらに向かってくる男。
これは…もしかしなくてもAさんの彼氏、だよな。
彼氏いたんか…というショックも大きいが、彼氏が怒っているのは俺が見てもすぐわかる。まあ自分の彼女が俺みたいな男と一緒にいるのはあまり良しとしないだろう。
俺がなにかフォローしてもこの場が壊れるだけだろうか、見守ったほうがいいのだろうかと、自分がどう出るべきか考えあぐねている間にAさんと男の間の空気が不穏なものになっていた。
「あっ、あの…ごめんなさい…」
絞り出すような声で彼女が男に謝る。俺は黙ってその光景を見ていたが、男がとった行動を見てさすがに黙っていられず動いてしまった。
男が、手を振り上げたからだ。
その手が彼女へ届いてしまう前に、男の腕を掴む。
「いやいや…ちょっと…。だめでしょ、流石に」
「なんだよお前」
「この人のお隣さんですけど」
絶対に彼女に手を上げさせるものかと、男の腕を掴む手に力を込める。しばらく男は俺のことを無言で睨みつけていたが、俺の手から勢いをつけて腕を離し、今度は彼女を睨みつけた。
「……許さねえから」
聞いた中で一番低い声でそう言い残して去っていく。隣りにいる彼女に目をやればその小さな体を強張らせカタカタと震えていた。
彼女を怖がらせないように、安心させるように努めて優しい声を出す。
「大丈夫？とりあえず家帰ろう。送ってくから」
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作者名：なちこ | 作成日時：2021年3月2日 4時
