＊Love Sketchbook＊ (ページ16)

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恋人前夜【S】ページ16

「明日からAともメシ行けねーな」

卒業式も終わり、彼は明日から新しい土地での生活が始まる。

「最後だし明日出発するまでずーっと飲み食いすっか(笑)」
「食い納めってこと？(笑)」

店が開いている時間まで何軒かハシゴして
店が閉まってからは翔ちゃんは私の部屋にやってきた。

食い納めなんて言ってもさすがにもう食べれるわけでもなくチビチビと飲みながら思い出話に花を咲かした。

「初めはさー、めっちゃ芋くせぇって思ったんだよな」
「知ってる(笑)目も合わせてくれなかったもん」

翔ちゃんの赴任地は名古屋。

「でも…本当に寂しくなるなぁ。
今まで何かあったら翔ちゃんだったのにもう簡単には会えなくなるもんね…」

本音だった。
彼氏でもないのにいつも私の一番近い場所に居続けた翔ちゃんがいなくなるなんて考えられない…

だけどそれは真夜中の、2人だけの場所で、しかもあと数時間でお別れ…なんて状況で言ってはいけない言葉だったんだと思う。

「あのさ…それ、反則だよ」
「ごめん」
「いや、謝んなくていいけど」

向かい合わせに座っていた翔ちゃんの手が私の頬に伸びてきて

「酔ってるからって事にしようか…」

私を見るその眼差しは初めて見る「男」の目だった。

恋人じゃない人とするのは初めて。
そういう事は好きな人とするものだと思っていた。
身体と心は別、だなんて私には理解できないと思っていた。

なのに翔ちゃんのキスはすごく気持ちよくて私の本能がブレーキをかける事を止めた。

「翔ちゃん…」
「なに？」

耳元で囁かれたその声に身体の奥深くが熱くなる。

「ヤバいかも…」
「オレも」

今までだって何度も触れてきた手のひらがこんなにも気持ちいいなんて。

恋人以外の前で裸になるなんて考えられなかったのに今は一刻も早く裸で抱き合いたい。

手のひらで撫でられるだけでこれだけ気持ちよくなるんならお互いの肌が触れ合ったらどれだけ気持ちいいんだろう。

そう思うと翔ちゃんの服に手を伸ばすのを止められなかった。

何をされても気持ちよくてびっくりした。
それまでは恋人のために演技をした事もあったのにそんな余裕はなく溢れる声を押さえられなかった。

こんなに合うなんて…
でもそれが別れの日の前日だなんて…

快感の隙間にふと差し込む後悔にも似た感情に気を遣った瞬間

「他の事考えんな」

ぶっきらぼうに言われて腰を突き上げられた。

そこからは翔ちゃんだけを感じてた。