【夏の果て】Ohno S. (ページ16)

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濃藍ページ16

今夜も見慣れた横浜の夜景を、

窓越しに見ながら仕事をする。

ふと時計を見ると定時4時間越え。

こんな生活に慣れてしまったのは

あまり良くない事だとは思う。

本当なら、定時上がりでオンモードからオフモードに切り替え、

キラキラした世界に向かうというのが理想だが、

「現実って厳しいんだよねー」

ホットで淹れたはずのコーヒーが冷めた。

今日は帰ろう。

明日は、大事な商談。

今朝のことがまるで夢みたい。

って、こんな事思うの、私だけなんだろうけど。

そう自分で考えると、寂しくなる。

ビルのエレベーターに乗り、降りるまでの間に携帯のチェック

メッセージの通知が来ている。

アカウント登録しているニュースの記事と、二宮。

二宮お前んちにゲーム忘れた、明日持ってきて!

Aりょうかい!明日渡すね!

こんなやり取りも少なくない。

あんまり公にしてると、会社にいる二宮ファンの女の子に嫌味言われそう、、、

でも別にやましい事は何もないんだけど。

エレベーターが地上に着いたと同時に、返信が来た

二宮ありがと!今日もお疲れさん

私には、こうして労ってくれる同期がいるだけでも

ものすごいありがたい事なんだろうなあ。

Aこちらこそ、ありがとね

外に出ると、やっぱり寒い。

濃藍の空は、夜が明けないんじゃないかって言うほど深い色だった。

微かに月と星が見えてホッとした。

明日は、晴れるのかな。

商談的にも、私情的にも忙しいであろう明日。

どう挑もうか、今からドキドキして止まない。