【夏の果て】Ohno S. (ページ14)

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赤橙ページ14

あれから緊張したままで、うまく会話ができていない。

パンを食べ終えて、２人で店を出る。

肝心の大野さんは、取引先との電話で大忙し。

、、大変なんだろうなあ。

どんなオフィスなんだろう、女の子も沢山いるんだろうな。

そりゃ、コスメ売ってるもんね、そうだよね。

私生活どんな事してるのかな、どんな家に住んで

どんな風に眠りについて、朝を迎えているのかな。

名前と企業名しか知らない"彼"は、

どんな人なんだろう。

朝の光と、ツンと冷たい冬の空気が交ざる。

あの大きい観覧車の赤橙で記された時計で、我に戻る。

智「ごめんね、電話ばっかで」

「いえ、もう出勤ですね」

智「そうだね、今日はありがとう」

「偶然会えて良かったですね！すごく、、楽しかったです」

智「明日打ち合わせで会うけど、今日会えてよかったな」

街行く人は、みんな駆け足で

それに飲み込まれそうになるけど

どうにか、目の前の大野さんを目に焼き付けたくて

ぐっと足に力を入れる

「じゃあ、、行きましょうか」

智「はい、これ」

間髪を容れず、差し出してきた名刺

智「また連絡ちょうだい。じゃ、頑張ってね」

「えっ、？はい！！」

私に手を振り、歩き出す大野さんは

もうクライアントの大野さんに戻っていた。

渡された名刺、これ持ってるんだけどな。

大きい企業名と、表面には大野智の文字

裏には、英語でSatoshi Ohnoと綴られている。

、、ん？

「連絡先だ、、」

綺麗な文字で書かれた、電話番号。

舞い上がりそうな気持ちを抑えながら

大切に、鞄にしまった。