【夏の果て】Ohno S. (ページ12)

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紅梅ページ12

ふんわり焦げるいい匂い

とろけそうなほどの気持ちを持った私には目も暮れず

大野さんはスタスタと店の中に入る。

私の手は、どうやら手を離した反動で

小さな勇気を落としてしまった。

智「どれ食べようかなあ、紺野さん、なに食べる？」

スーツの大野さんが、トングとトレーを持ってて

なんだか可笑しい。

「ふふっ」

智「ん、なに？」

「いえ(笑)あ、私取りますよ！」

智「いーよいーよ、バッグ重たいでしょ？」

「あ、、じゃあ、お言葉に甘えて、、」

智「ん。これ、紺野さんっぽいからこれ取ろ。」

そっと、大野さんが取ったパンは

「紅梅のデニッシュ、、？なんで私？」

隣の大野さんを見上げると

ちらりと私を見て、

智「そのほっぺとリップの色が、紺野さんぽい」

ドキドキしてときめいて昇天しそうな所を抑えながら

「あ、え、ええ～！ああ、このピンクのジャムですね？！」

智「今日も似合ってるね」

「も、もうすっかりこのリップの虜です！！」

智「ふふ、ありがと。あ、俺これにしよ～塩パン」

パンに集中できず、大野さんをチラチラ見ながら

今というこの時間を大切に大切に刻んで

なんならめちゃくちゃ写真撮りたい、なんて

思っちゃったりしてる。

サラっとお会計してくれて、

接待だからいいのいいの、笑

なんていいつつ、テーブル席に向かう。

店に流れてる、さわやかなBGM

なんていう曲なんだろう

これは思い出の曲になるだろうな。

まるで夢みたい

まるで、夢